自閉症者が言葉を覚える際の障壁とは何か

自閉症者が言葉を学ぶ際には、健常者にはない様々な障壁がある。それを次に列挙する。
(1)文法を創成出来ない
健常者は親が話をする、先生が話しをする事などを聞いて、頭の中に文法を創成し、人の言葉を次第に理解するようになります。更に発達すると、彼等と同じ言葉を話すようになるのである。
    しかし、自閉症者は健常者と比べて言葉の発達が緩慢なのが通常である。片言の言葉を話す段階が長く続くのである。この原因は、健常者の様に文法を創成する能力が低いためと思われる。
(2)言葉がもつ概念を簡単に理解できない
   「林檎」という言葉を教えるために、りんごの写真をみせて、先生が「りんご」と発音したとしよう。先生の言いたいことは、この絵は「林檎」を表わし、それは「りんご」と発音します、という事にある。健常者はこの事を直ちに理解するが、自閉症者は必ずしもその様に理解するとは限らない。
彼等は往々にして、「その写真を「りんご」と呼ぶ」と解釈する。その結果、描かれている「りんご」という言葉が「林檎」という実体を表わす事に気が付かないので、別の林檎の写真を見た場合に、大きさや模様、へたの様子など異なっているため、「(それは) 林檎(です)」といのうを躊躇する或いは言えない。
一方、先生が林檎の写真を見せて「りんごです」と言うと、生徒がオウム返しに「りんごです」と答えるので、この絵が林檎を表わし、かつ「りんご」と発音することを理解したと勘違いするのである。この時点では、必ずしも彼等は「りんご」と発音した対象が、「林檎」という実体を有する果物であり、それを「りんご」と呼ぶとは認識していないのである。
教師がこの事に気が付かないと、効率的に言葉を教えることが出来ないのである。
(3)先生の話を必ずしも聞き取れない
自閉症者は、授業の最中でも自分の世界に入ることがある。この時には先生の声は聞こえない。或いは、先生の話す速度が早かったり、息もつかずに話したりすると、彼等は全部を聞き取ることが出来ず、結果として聞き漏らすのである。
一旦聞き洩らすと、その後は何を言っているのか分からなくなるため、先生の話を聞く気が起こらなくなる。教師はこれらの事を考慮しながら、自閉症児を教えなければならない。しかし、教師たちは彼等の状況を正しく把握できないため、健常児を教えるように彼等を教える事になる。その結果、彼等は授業について行けなくなる。つまり、落後して行くのだ。
(4)言葉の大体の意味が分かっても、細かい感情までは理解出来ない
感情を伝える方法は言葉のみではないが、ここでは言葉に限定する。日本語においては、感情を表わす言葉、例えば怒る、笑う、泣く、悲しむなどの言葉を用いたり、接続詞や終助詞を用いたりして表現する。
彼等は怒る、笑うといった感情表現は理解出来るが、接続詞や終助詞を用いて感情を表現することができるという事は教えられていないため、これらを使って感情表現をすることや、これらの言葉を用いた感情表現を十分に理解することが出来ない。
もし、普通教育の下で彼等を教えるなら、必ず支援する者をつける必要がある。親が支援することになるかもしれないが、限度がある、或いは親も忙しくて支援する時間がないという事があり得る。専門の人を学校側が付けるか、或いは同級生たちが支援する役割を担う必要がある。同級生が支援するのが最も効果的と考えるが、それがいつでも可能とは限らない。学校教育において、これは大きな壁となっている。
また、プライベートで彼等を教えるなら、彼等の語学の発達状況を見ながら教えていくことが必要になる。


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