シェディングはマスクで防げるのか?

【要約:完全に防ぐのは無理ですが理論上は減らすことが出来ます。】

いまだ謎の多いシェディング

体液に含まれるとされるエクソソームスパイクタンパク質のシェディングは、理論上は起きると推測されているものの、それがどの程度起きているのかはまったくと言っていいほど不明です。もしかしたら何も起きていないかもしれません。(デマだと言うなら科学的に潰して欲しいところです。)

とはいえ、SNS上での個人の報告を見たり、私の実体験から考えるとそれが起きていると思えなくもないです。

ということで、シェディングが起きていると仮定した場合、マスクでの防御は可能なのかについて考えてみました。
本記事は微粒子のサイズに対してマスクでの濾過機能がどの程度期待できるのか、という内容になります。(マスク着用におけるデメリットについては考慮されておりません。ご注意ください。

なお、この記事で記載する大きさの単位についてはnm(ナノメートル)で統一しています。
(1nm=0.001μm(マイクロメートル))

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まずは、エクソソームのサイズについて。
(日本版wikipediaから抜粋)

エクソソームまたはエキソソーム(英: exosome)は、大部分の真核細胞において、エンドソーム区画で形成される膜結合性の細胞外小胞(英語版)(extracellular vesicle、EV)である。
~中略~
エクソソームのサイズはMVBの大きさによって制限されるため、一般的には他の大部分のEVよりは小さいと考えられている。直径は約30–150 nmで、これは多くのリポタンパク質と同程度のサイズであり、細胞よりはずっと小さい。

次に、スパイクタンパク質のサイズについて。
(英語版wikipediaから抜粋)

スパイクはコロナウイルスの最も際立った特徴であり、コロナまたはハローのような表面の原因です。平均して、コロナウイルス粒子には74個の表面スパイクがあります。各スパイクは約20nmの長さで、Sタンパク質の三量体で構成されてい ます。

上記から、濾過したい微粒子のサイズを直径20-150nmと仮定します。

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さて、マスクの濾過機能の確認。

まず、たまに見る『マスクの網目が粒子径よりも大きいからフィルターできない。』というのは誤りです。マスクは物理的なサイズにより濾過しているのではなく、拡散効果(ブラウン運動)など様々な物理現象により微粒子を濾過できます。
そのあたりは以下の資料が参考になります。

粒子状物質の捕集のメカニズム
https://multimedia.3m.com/mws/media/1318993O/respiratory-protection-06.pdf

ちなみに、マスク全般については以下の資料がたいへん参考になります。(上記の資料も引用されています。)

マスクの流体力学(豊橋技術科学大学・飯田明由氏)
https://www.hpci-office.jp/invite2/documents2/ws_cae_210312_iida.pdf

上記から、一般的には300nm前後の微粒子が最も捕捉しにくいと考えられています。

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では、私たちが使っているマスクのフィルター性能はどうなっているのでしょうか?マスクの代表的な規格(国、機関)と試験で使用されている微粒子のサイズは以下のように決まっています。

・PFE(日本,カケン)
: 約100nm

DS2(日本,国家検定)
: 60~100nm

N95(アメリカ,NIOSH)
: 75±20nm

普通に市販されているマスクで『PFE99%』とされている場合、約100nmの微粒子を99%(以上)濾過するということです。DS2,N95は上記の微粒子を95%(以上)濾過する性能を持ちます。
(2022.10.21 追記:DS2,N95のほうが性能が低いというわけではなく、試験条件の違いによるものです。)

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さて、フィルター性能についての結論です。

仮定した捕捉したい粒子サイズは直径20-150nmなので、概ね前述した試験条件と重なります。理論上はサイズが小さい場合に拡散効果が強く働きますので、20nmでも濾過が期待できると思います。(グラフからの推測です。そこまで小さな微粒子での性能評価情報は見つけられませんでした。)

[2022.07.07 追記]
以下のデータによると、いわゆるDS2の規格のマスク(フィルター)であれば、100nm以下でも90%以上を捕集していることが示されています。

検定区分による捕集効率の比較
ナノマテリアル対策 - 法令・ガイドライン等 | シゲマツ情報局 | 株式会社 重松製作所
[2022.07.07 引用]
https://www.sts-japan.com/information/health/nano.html

フィルター性能は問題なさそうです。しかし、問題はそれ以外のところにあります。

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問題なのは隙間です。
とにかく一番重要なのは装着時の気密性。漏れないこと。隙間がないこと。
そのような設計がされているマスクを選ぶべきだと考えます。

また、圧力損失が低いもの(息がしやすいもの)を選ぶのも重要になります。圧力損失が高いものは結局使うのが嫌になりますし、隙間が生じた際にそこから空気が流れやすいです。

気密性と圧力損失はかなり重要なポイントになるのですが、ドラッグストアなどで買える多くの普通のマスクは明確な基準が無く、製品仕様からマスクの性能が評価できません。(今年から制定されたJIS規格を取っているものは圧力損失に関して決められた指標をクリアしています。)

それに対して、N95,DS2,FFP2などの規格に適合した高機能マスクは概ね形状的な工夫がされており、圧力損失も製品仕様から明らかなものがほとんどです。

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ということで、具体的なおススメのマスクについて。

以下のものは形状的工夫や息のしやすさで優れているため、おそらく1日中着けていてもそれほど苦ではないと思います。
()内はメーカー、【】内は1枚あたりの参考価格。

①Aura(3M)【300円】
②Vflex(3M)【100円】
③Zexeed 6240(ヤマシンフィルタ)【250円】

金持ちなら①を使いましょう。日米首脳会談でも両代表が着用していました。見た目に妥協できるなら②。ケチりたいなら③を気を付けて再利用。私は③を使っています。なお、①②は当然使い捨て推奨です。

その他でもシゲマツのラムダラインシリーズなど、国内の防塵マスクでも良さそうなものはあります。また、普通のドラッグストアに売られているものでも、興和の『三次元高密着マスクnano』はうまく密着させれば高い効果が期待できそうです。

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ところで、上のおすすめを見て『ガチマスクばっかじゃねえか、マジかよ。』と思った方、気持ちはわかります。実際のところ、普通に市販されているマスクでも隙間に気を付ければそれなりに効果はあると思います。

判断指標としては『匂い』が参考になります。

個人的に①②③やその他のマスクを着用して気付いたことですが、正しいマスクを正しく装着出来ている場合、薄い匂いはほとんど感じなくなります
例えばコンビニなど店舗内の独特の匂いや自室の匂い、それらを感じるかどうかでフィッティングやマスクの性能を試すことが出来ます。
普通のマスクでも上手に使えば性能を生かす事が出来るでしょう。特に鼻脇の隙間に注意してください。

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おわりに。

マスクはあくまでもリスクに応じて使いわけするものだと思っています。個人的には実験のつもりで比較的常時着けているものの、健康上のデメリットはあるとされていますし、そもそもマスクを着けるほうが感染しやすいという説もあるほどです。

環境リスクを考えたうえで、ストレスが溜まらないようにうまくマスクと付き合っていきましょう。


[2022.04.13追記]
有毒ガス(ホルムアルデヒド)の可能性を想定し、以下の続編記事を書きました。よろしければどうぞ。


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