アイのない恋人たち 3話までの感想
脚本 遊川和彦
こじらせアラサー7人の恋愛群像ドラマ
それぞれの人物像が魅力も欠点も自然にリアルに描かれていて、見応えがあって面白いです。
福士蒼汰が演じる売れない脚本家の久米真和(マサカズ)はマッチングアプリで
ブックカフェを経営する31才メガネ女子の今村絵里香(岡崎紗絵)と知り合います。
真和は女性と会うのは3回までと決めている「愛のない男」
絵里香は男性経験がなく一生独身でもいいと思っている女。
初デートで別れ際に「あなたの書いた脚本読んでみたい」と言う絵里香。
夜の公園で脚本を真剣に読む絵里香。
どうだった?と真和に聞かれ、感動して涙ぐみながら「絶対見ます。映画になったら」と言う絵里香。
衝動的にキスする真和。
真和を思い切り突き飛ばす絵里香
その突き飛ばし方が地面に投げ飛ばす凄まじさで、(真和はベンチから背中を地面に打ち付けて頭まで打っている。)
これは雰囲気で見せていく甘い恋愛物語ではないな、と視聴者としては思い知らされます。
「相手と本気で向き合う気がないなら世界中の女と関わるな、このクズ野郎!」
と言い捨て、立ち去るがまた振り向いて
「あんたに人を幸せにする脚本なんて絶対書けないから!」
と呪いの言葉まで叫んで帰る容赦のなさです。
そして真和はその直後、深夜の連ドラのピンチヒッターの話が舞い込みますが、
絵里香の呪いの言葉が思い出され、マジに書けなくなってしまうのです(笑)
♥️✨♥️✨♥️✨♥️
中心となるのは真和と絵里香の恋愛か?と思われるのだが、
そこに真和の高校時代の初恋の彼女で、15年ぶりに再会した稲葉愛(佐々木希)が引っ掻き回すことに。
高校生の時の愛は男子たちの憧れのマドンナでピアニストを目指していた。
当時、真和は突然振られてしまう。
現在の愛はピアニストを断念し、結婚、育児放棄、離婚、キャバ嬢となり、恋と酒におぼれる日々を過ごしていた。
あまりの変わりように真和は失望を隠せないが、愛を放っておくことはできず、振り回されてしまう。
愛は書けなくなった真和のために、絵里香のブックカフェを探し出し、真和をそこに呼び出して、
「あとはお若い方お二人で」
と世話焼きのおばちゃんみたいに去って行く。
その感じはいかにも主役二人の恋愛を掻き回すサブキャラっぽくもあるのだが、
(実際、他の人の感想など読むと愛は邪魔、この物語にそこまで必要ないという意見もよく見られた。)
実は愛の役割はかなり重要だと私は思います。
3話のラスト。
真和を待ち伏せしていた愛の前に、絵里香といい感じの電話をしている真和が来ます。
カメラは愛の表情を映し、
(真和を斜めから俯瞰して嫉妬を密かに浮かびあがらせるような絶妙な表情)
行き過ぎる真和に愛は隠れて声をかけず、
二人で飲もうと思って買ってきたビールを住宅の壁に寄っかかって飲むのです。
主役の真和ではなく、この愛の姿がラストシーン
ここからもわかるように、愛は真和の恋愛の本質的なところに今後も深く関わる存在となっていくと思います。
人の迷惑お構いなしにグイグイ行くようなトラブルメーカーに見えて、実は引いて俯瞰するような女性でもあるということです。
✨✨✨
そしてこのドラマのタイトルでもある「アイのない恋人たち」
真和は「愛のない男」が担当ですが、
なぜそんなふうになったのか?
心から人を愛することも愛されることからも逃げている男。
将来結婚したいとまで想っていた高校時代の恋人の愛に突然振られたことが、その後の恋愛観に影響を与えたのだと思います。
愛のない男にとっての愛。
佐々木希が演じる稲葉愛というキャラクターの名前にその「愛」を使っていることからも、重要人物だとわかります。
そして愛は育児放棄して子供を置いて家を出たことを後悔していますが、真和もまた中学の時に男をつくった母親に捨てられています。
💚💙💚💙💚✨✨
一方、絵里香の名前には「絵」という文字が入っていて、彼女は読書好きでブックカフェを経営しています。
真和の脚本に涙ぐんで感動し、
自分の呪いの言葉で書けなくなった真和に
「あなたなら書ける絶対書ける! てか書け!
自分を信じて。私たちを励ます物語を!」
と力強い言葉をぶつけます。
真和はぶつけられた情熱に突き動かされ、家に走って帰り、一気に脚本を書き上げるのです。
真和と絵里香は芸術とか夢とか人生観といったもので繋がっていくような関係性に発展していくように感じます。
💚♥️💚♥️💚♥️💚
脚本を書き上げた真和はブックカフェへ行き、
「この前キスしたのはあなたが俺の脚本を読んで泣いてくれたのを見たらめちゃくちゃ嬉しくて、なんか愛おしいなと思って勝手に身体が動いただけで。そっちからしたら身体が目的みたいに見えるだろうし、高校の友達からもお前には愛がないって言われるけど、俺だって一緒にいるだけで嬉しいとか元気が出る人は大切にしたいし、そんな人と会えなくなるのは寂しいから、
四回目も会っちゃだめかな?
いいって言われるまで指一本触れないから。」
「また会えないかな? 今村絵里香さん」
ここで名前をフルネームで呼んだのは、真和が最初のシーンでマッチングアプリで知り合った女性と寝た後、「私の名前覚えてる?」と聞かれて答えられなかったたこととの対比です。
主役なのに最低な男と視聴者に思わせて、
そこから堅物真面目な絵里香に「今村絵里香さん」とフルネームで呼び、
「4回目も会っちゃだめかな?」と真剣に伝えるシーンが、脚本的には戦略なんですが、心に響きました。
福士蒼汰のどこかやさぐれた大人の男っぽい風貌や温かみのある話し方、声が魅力的に映ります。
✨♥️✨♥️✨♥️✨
愛に嫉妬する絵里香
「愛さんが付き合ってくれって言ったらどうします?」
「それはその時にならないと」と真和。
「じゃ私のことはどう思ってるんですか?
なんで私の心の準備ができるまで待つとか言ったんですか!」と絵里香
絵里香と向き合うと決めたはずなのに、
今現在、愛が付き合ってくれって言ったら
「その時にならないと」と言う真和の本音には、
驚かされました。
絵里香にひかれつつも、真和にとって過去とは割り切れない気持ちが愛に対して今もあるのです。
そして、それを付き合い始めの女性に対して隠そうともしないのです。
最後に触って欲しいと言う絵里香に、
真和はタイタニックのバックハグを提案するが、
「明らかに現実的じゃないし」と悩み、
「次会う時までに考えてきていい?」
とうっかり言ってしまい、
「もう会いたくないんだったか」と寂しそうに言う。そんなのが良かった。
絵里香の表情が更に寂しそうになるのが、尚良くて。
ここで絵里香が何も動かなければ二人は別れる。
そうやって気持ちの空回りや相手とのズレや自分のプライドだったりが邪魔をして、付き合いが途絶えていくのが現実だったりするので。
しょんぼり夜道を帰って行く真和の背後からタックルするようにバックハグする絵里香。
どうにかしたくて突き動かされる気持ちの揺れが、
すごく伝わってきてじーんときました。
その絵にかぶせて真和のN✨✨✨
「恋愛なんて他人から見れば喜劇でしかない。
恋愛は人間を思いもよらぬ行動に走らせる。
相手との距離が縮まれば縮まるほど、知りたくもないことを知る。考えたくもないことを考えてしまうけど、
結局人を愛することで自分が何者かって気づくんだ。」
頑張ったぶん成果が出るようなことと違って、
恋愛には正解も不正解もなく、
ただどうしたいのかを自分が考え、
考えることで自分の人間性を知る。
相手を分析したり分析できなかったりする。
🍊🍊✨✨✨
見る目(アイ)のない男、交番勤務警察官の郷雄馬を演じる前田公輝はセクシー田中さんの時にいいなと思った俳優で、
やり過ぎる感じがあってもそれを超越した魅力を感じます。
区役所の戸籍課に勤めるお嬢様の近藤奈美(深川麻衣)との恋愛は、とにかく可愛くて微笑ましく素敵なバカップルですが、
次回は雄馬のたった一人の身内の祖母が反対するようです。
奈美はピンクが好きで可愛らしく見えるけど、自分の描いたストーリーとか順番を相手に守らせようとしたり、自分の話ばかりを長々として、
自分が大好きで仕方ないんだなと思わされます。
一方、雄馬は奈美が好きなピンクのセーターを自分が着るほど、相手の色に染まろうとする。
そんなことばかりしていると、雄馬の良さが消えていく気がします。
雄馬がどんな◯◯が好き?とたくさん奈美に質問したけど、奈美は雄馬に聞きません。
🍊🍊🍊✨✨
食品会社に勤める渕上多聞(本郷奏多)は女性と付き合ったことがなく、相手に合わせすぎて恋愛に発展しない自分(I)がない男。
会社の後輩の富田栞(成海璃子)が気になるけど、自分の拘りの私生活を壊されたくなくて、
踏み込んできてイライラをぶつけてくる栞に対して、
「こういうことになるから恋愛って面倒なんだ。
こっちは散々気を使っているのになんでそんなこと言われなきゃならないんだ。だったら家で一人で好きなことやってたほうが全然マシだなって思って。そういうのバレたくないから本音言わないだけ。」
と本音を言います。
こういう感じになったきっかけは、両親と何年も会っていないと言う多聞にどうしてなのか栞が聞き、
「いろいろあって」と多聞が答えると、
不機嫌になった栞が「私、一番嫌いなんてすよ。いろいろあるって言葉」と言います。
付き合い始めてどうなるかわからない人に自分の言いたくないことを言わないのは当然なのに、栞は自分の物差しでしか計れないほど、不機嫌で鈍感な女性だなと思います。
多聞を好きでアプローチしてくる会社の女の子のほうがまだ多聞と結婚とかしてもお互いに自分の趣味とかしそうで、多聞の拘りの私生活が崩されたり不自由にならないかもしれません。
サブキャラなんでその子がどんな子か知らんけど。
栞よりはってことです。
✨✨✨✨✨✨✨
読んでくださり、ありがとうございます😊
次回も楽しみに見て、また感想を書きたいと思います。♥️