アイのない恋人たち6話 感想
↑この画像のシーンが6話の中で一番印象的でした。
物語としてはベタかもしれないけど、二人の表情(前田公輝、深川麻衣)がめちゃくちゃ良くて気持ちを持っていかれました。
特に郷雄馬役の前田公輝の演技力が素晴らしかったです。
切なさと心残りとふっきった優しさと複雑な気持ちを涙を含んだ笑顔で表現しました。
郷雄馬(前田公輝)と近藤奈美(深川麻衣)は
知り合ったばかりで電撃結婚へ。
まだ相手のことを知らない状況から、本当にこの人とやっていけるのか?という疑心が雪崩のように結婚式の前夜に向けて表れてきて、
ついに二人は揃って(それぞれ)結婚式から逃亡します。
そして奈美は母親の決めた見合い相手と、
雄馬は結婚相談所のお見合い相手と一緒に
ホテルで食事するためにやってきて、
奈美の相手も雄馬の相手も同時に仕事の急用で呼び出されて帰って行き(そんな偶然無いけどね。😂)
残された雄馬と奈美がいったん激しい言い争いをした後、すぐに想いが募って電話で話すのです。
雄馬がかけようとした瞬間、奈美からかかってきて。
何言うか忘れちゃった、という奈美に、
雄馬「俺たち本当にバカだなと思って」
奈美「そうだね。本当にバカだね。」
雄馬「二人ともバカだから………もう会えないね」
雄馬「奈美ちゃん…いい人、見つけてね。」
奈美「そっちもね」
雄馬「幸せになって」
奈美「(涙が溢れ笑顔つくって)幸せになって」
自分から切れなくて、雄馬の提案で同時に切るのです。
✨♥️✨♥️✨♥️✨
6話はこのシーンや、後述する他の人物のシーンで感動させられました。
一方で違和感がありました。
「芝居じみた共鳴のリズム」を多用していたことです。
5話でも雄馬と奈美がほぼ同じ文面のメモを残して結婚式から逃亡し、
路上でばったり出くわし、ともにごめんなさいと言って去って行くシーンがあり、
そのリズム感、芝居じみた共鳴を感じましたが、
面白くはまっていました。
5話のラストも登場人物全員に何か物を投げつけさせました。
6話は意図してそれを多用してきたのです。
前述したように、雄馬と奈美がそれぞれの見合い相手と一緒にホテルに来て出くわすのは良いとして、
お互いの相手がほぼ同時に仕事の急用の電話が入り去って行く。
その直前のシーンは、雄馬が奈美の家の前へ行き、奈美が雄馬の家の前へ行き、それぞれの家の人に見つかって真逆の対応を受けます。
脚本を降りると真和(福士蒼汰)から連絡をもらった絵里香(岡崎紗絵)と愛(佐々木希)が彼の家に行き、
就活へ向かうスーツ姿の真和(ネクタイひん曲がり笑)と出くわします。
愛のことを悪く言う真和の頬を絵里香がひっぱたき、
絵里香のことを悪く言う真和の頬を愛がひっぱたくシーンがそれです。
絵里香と愛は真和の胸を交互に叩いていきます。
「いい加減にしろよ、二人とも」と真和にはねつけられて、
震えながら泣く絵里香(岡崎紗絵)と愛(佐々木希)の表現力は凄まじいものがありました。
✨✨✨
芝居じみた共鳴のリズム✨✨✨
もっと自然な感じで人物を動かすこともできるのに、あえて実験的に? そういう手法を取っているんだなと感じたのが6話です。
芝居じみた共鳴で私(視聴者)はいったん冷めた感覚で物語を俯瞰します。
しかしリズム良く(役者の演技力が加速して)心情を畳み掛けます。
左脳から右脳へと、私(視聴者)の感じ方は忙しくなり、お手玉のような不思議な感覚がありました。
この感覚を演技のリズム感で昇華させていっている感じです。
✨♥️✨♥️✨♥️✨
真和N「ここ(東京)にはもう自分を必要としてくれる人なんかいない気がする。それどころか自分はなんて価値のない人間なんだろうって思ってしまう。」
全てが上手くいかなくて圧倒的な虚無感と自己否定の渦中、
真和の才能を信じて感情をむき出しにしてぶつかってくる絵里香と愛という二人の女性。
絵里香と愛がカフェで美味しい珈琲を介在してほんの少し近づく距離感が素敵です。
二人の女性に愛されて、真和は就活の面接中に腫れた頰で我に返って場違いな本音を言います。
真和「あいつら本気でやりやがって。でもあいつらの言う通りなんですよ。俺ほんとはこんなところにいたらダメなんてすよ。でもどうしたらいいんですかね。ここから出て行って俺どうしたらいいんですかね。」
お金持ちのおじさまからプロポーズされた愛も言いました。
「毎日広い海を一人で漂っているような気分なの。どっちに泳いでいけばいいのか全然わかんないの。わかるのはただ、なろうと思っていた自分とは遠ざかっているってことだけで」
真和は愛を責めて、愛は真和を責めます。
相手のことが好きだから、その生き方がもったいなく感じてイラつくのです。
でも愛も絵里香も、真和がプロデューサーから(最近表面化されて話題になっている芸能界のパワハラ)AIの脚本をパクって仕上げろと言われていることは知らないし、
長く演奏すると腕が痛む愛がどんな気持ちでピアノを諦めたのかは知らない。
相手を好きな気持ちがベースだとしても、自分の望む理想像を相手にゴリ押ししていると感じ、複雑な気持ちになります。
(予告で真和はプロデューサーに頭を下げていた。)
プロデューサーからの脚本のダメ出しで「卒業式前に高校生3人がチェリーを歌うって、今どき恥ずかしすぎるだろ。」というのが、
まさに初回で高校生時代の真和たち3人が歌っていたシーンがあり、その時私も多少恥ずかしい類のシーンだと思ったりしました。
もちろん感じ方次第なのですが、何よりあのシーンを真和たちの絆?として初回に入れたのはこのドラマの脚本家である遊川和彦氏であり、
その本人が「恥ずかしすぎるだろ。」とダメ出しを入れてきたのはめちゃくちゃ自虐的で笑っちゃいました。
♥️✨♥️✨♥️✨♥️
さて多聞(本郷奏多)と栞(成海璃子)のカップルですが、
栞が父の介護のために会社を辞めて故郷へ帰ることを聞いた多聞が、ショートメールで本当の気持を伝えていくのが印象的でした。
「一言だけ言わせてください。」
「ほくはあなたと会えて幸せでした。」
「ウソじゃないです。」
「あ、すいません。もう一言だけ」
「寂しいです。」
「今更、何言ってるんだよって感じだよね。すみません。」
✨✨✨
このショートメールを送る前に多聞は栞の手柄を横取りした上司に意見を言って、栞にお礼を言われ、その時にモメる原因となった例の件を栞からまた話しています。
栞「すいませんでした。経験がないこと気にするなとか軽い感じで言ったりして。でもあんなにキレるってことは、渕上さんはそのことがずっと心の迷いになっていると思うんです。だったらいつまでも引きずらないでほしいから、あんなこと言っただけで。できれば私がなんとかしてあげたかったんだけど。あっすいません。何言ってんだろ?私」
これは前回の繰り返しを分析つきで、栞が多聞の目を見て話しています。
「できれば私がなんとかしてあげたかったんだけど」とまで言いました。
前回は栞に知られていた驚きとショックもあったが、栞に「上から」悩みを慰められたことにより多聞はプライドが傷ついて、栞を傷つける言葉を畳み掛けて破局へ向かったわけです。
しかし今回の多聞は同じことを言われて、上記のようなショートメールを書いています。
自分のプライドより、栞への愛情が勝って、切なさと悲しさの感情が溢れてしまったのでしょう。
じっとその多聞からのラインを読む栞にも伝わっているようです。
♥️✨♥️✨♥️✨♥️
6話ではシャッフルの予感を感じさせる意外な組み合わせが見られました。
多聞は絵里香のブックカフェへ行き、同じように経験が無く恋愛に対する懐疑的な面から意気投合します。
✨♥️✨♥️✨♥️✨
そして真和がバイトする牛丼屋に栞が偶然行って大盛りを食べます。(笑)
真和は友達思いの気の利いた台詞を言って栞の気持ちをちょい掴みした後、誘いをかけて栞に水をぶっかけられます。
別にさ。破局したと聞いた後だから軽く誘ってもいいんじゃないですか?☺️
それで乗ってくるなら、自分が誘わなくてもそれまてのことだし。
恋愛の群像劇では男女のシャッフルがあるかも?と思わせることが素敵なスパイスになるので、
実際にシャッフルしなくても、凝り固まった関係性に新鮮な風が吹いてくるように感じられます。
✨♥️✨♥️✨♥️✨
雄馬の祖母(丘みつ子)は温かくて癒やしです。
謝りにきたと言う奈美に、鋭くて優しい言葉をかけます。
「なにか別人みたいね、奈美さん。雄馬と付き合っている時はあんなにキラキラしてたのに。
雄馬も一緒よ。奈美さんと付き合っていた時はあの子もキラキラしてたから。楽しい人と付き合うと人は成長するって言うし。あなたも雄馬も人をキラキラさせるパワーがあるのかもね。ふふっ」
大切な孫の雄馬が傷ついたのに、奈美と雄馬を公平な目線で見て、明るさを周囲に放つような笑顔が素敵でした。
奈美も笑顔になります。
♥️✨♥️✨♥️✨♥️
読んでくださり、ありがとうございます。
次回もまた楽しみに見て感想を書きたいと思います。