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ヴァカンス
大学生の夏休みは時間を持て余していた。
ひまでひまで仕方がなく、暇すぎてヒマだということが日常化されてなんとも思わなくなるくらいに『ひま』だった。
午前中は自転車を漕いでマンゴーの収穫のアルバイトをし、午後からは家で「少女革命ウテナ」や「ベルサイユのばら」などの長編アニメを2日ほどで一気見したり、ハリーポッターよりも分厚い村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」をソファで1日中読んでいたりした。
わたしの大学生の夏休みは、膨大な時間を持て余しながら1日1日を過ごし、たまに開け放っていた窓から涼しい風が昼寝をする私の頬を撫でるような、暑く、遠い、幻のような記憶となった。
あのときの、ずっと続く夏休みのような時間がこの先の人生でくることはないだろうと思った。
しかし、予想に反して人生の夏休みは再び訪れた。いや、訪れたというよりは作ったのだ。
今いる場所から離れるとわかることがある。
東京でのわたしは寂しく辛く、部屋は狭かった。
わたしは勤めていた東京での仕事を辞めてプラハへ行った。
その年は毎日が夏休みのような日々だった。