読む、れもんらいふデザイン塾vol.7【遠山正道】
ここ最近、「アートとビジネスの関係性」みたいな話をすることが多い。アートはビジネスじゃないけど、ビジネスはアートに似ている。
こんにちは、嶋津亮太です。上記は今回のゲスト講師、遠山正道さんの言葉。遠山さんは株式会社スマイルズの代表取締役社長であり、『Soup Stock Tokyo』や『giraffe』などの事業を展開する。最近では、新たに『アートスティッカー』などのアーティストを支援するサービスもはじめた。『れもんらいふ』の名付け親でもある。
アートとビジネスを綴れ織りにして、新しい世界を育む。アートの発想からビジネスに結び付け、ビジネスの視点からアートの種を育む。対極に見える互いの関係性。それを自転車の両輪のようにバランスを取りながら、互いの潜在的な力を引き出しつつ前進する。
これからの時代に求められる力。そのヒントがここにある。
※写真は伏見歴堂さんのものを使用
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見えないトリガー
アートとビジネスの結節点は「全ては自分ごとである」というところ。
遠山
私は、アートのことを「見えないトリガー」と呼んでいる。トリガーというのは「引き金」という意味。ふと思うことがある。自分たちが見えているもの、言語化できているもの、触れることができるもの。それらは世の中の10%くらいのことなんじゃないだろうか。
残りの90%は日の当たらない暗闇の中にある。そして、きっと、この90%の方にこそ、まだまだその価値のようなものがたくさんあるんじゃないだろうか。そんな、私の仮説。じっと目をこらして、何かを見つけようとする。
「見えないトリガー」は、この90%のところにあって。アーティストがキャンバスの上や、インスタレーションで表現することの意味。それは、様々なコンテクスト、あるいは美意識の中から、それを具体化して提示していく作業なのではないだろうか。そんなことを想像しながらも、私たちはどうしても目に見えている10%に目がいってしまう。
私の目が不自由だとしたら、手探りで何かを探して、手に触れたものを頼りにするよね。例えば、目の前にあるテーブルのように、感触があるものにすがりつく。目が見えているならば尚更のこと、目に映るものを頼りにする。要するに、「見えていないこと」を自覚すること自体が難しい。
全ては「自分ごと」
目に見えない90%の方は、自分から仕掛けない限り、1mmもそちらの方には動かない。
アートには上司がいない。あるいは、お客様もいない。明日何時に起きようが、朝まで飲んでいようが、だれも文句を言わないし、注意してもくれない。自分で考えて、自分でやるしかない。そこがアートの素敵なところ。
クライアントワークが悪いわけじゃない。サラリーマンは会社(上司)がクライアント。起きる時間も、会社がはじまる時間から逆算して決めている。いろいろなことが会社の都合で決まっていて、行けば仕事が用意されている。
クライアントワークには2つの宝物がある。1つは課題。もう1つはお金。課題があると便利。「やること」が決まっているのだから、ブレストしたり、調査したり、プレゼンしたり、テストしたりすればいい。その上、お金もクライアントから用意されている。クライアントワークには最初から〝都合〟がある。だから「自分が何をやりたいか」を考えるタイミングって実はないんだよね。
ずっとクライアントワークをしていると、気持ちがいい。みんなが「ありがとう」と言ってくれるし、お金も入ってくる。「これをやりたい」という自分の発意。そういうことを知らないまま気が付くと60歳になっている可能性がある。
そこで「あれ?どうするんだっけ?」となっても遅い。だから60歳になる前に、それだけじゃない働き方、生き方、感じ方を持っていた方がいい。「自分の発意」と「クライアントワーク」を行ったり来たりした方がいい。
アートはビジネスじゃないけど、ビジネスはアートと似ている。全ては「自分ごと」というところが似ているのかなって。
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