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2023年 47th 埼玉綜武道大会

左足の親指付け根をパックリ割った。
学生の時ぶりの感覚だ。
昔は冬場の稽古の後によくひび割れを起こしていた。
これが中々悶絶する痛みでして……。

足首の可動域が狭いとか、稽古後の指のケア不足など、様々な要因はあるのだが久しぶりの痛みに懐古的になっている。

2月は様々なタイミングに恵まれた。
……筋トレメモを覗けばほぼ毎日、手刀打の素振を欠かさなかった様だ。

日々のトレーニングに加え、毎週水曜日の柔道を必ず欠かさなかったこと/池袋綜武会、春合宿、埼玉大会……と週末は武田流、母校などの主イベントに参加出来たことも良かった。
昨年の全日本を経て、どうやればスタミナと瞬発力を両立出来るだろうかとあれこれ工夫してきた。
結果として……
1 手探りではあるがケガをせず継続できたこと(体)
2 投げのタイミングを柔道で磨いたこと(技)
3 何より自分の主戦場である武田流のイベントに向けて気持ちを高めていけたこと。(心)

つまり、自分的には「心技体」がしっかり整った状態で大会を迎えられた訳だ。

第47回埼玉綜武道大会 開幕


さて、いよいよ大会である。
去る2月26日に埼玉県三芳町総合体育館にて、丸3年ぶりとなる埼玉綜武道大会が盛大に開催された。

私は立教大学体育会合気道部のコーチであるが、武田流中村派の一門下生として自分の修練もさせて頂いている身である。

というか、本来順番は逆である。

一門下生に過ぎない身分ながら、合気道部のコーチなんていう非常に高尚な立場を頂いている、というのが正しい。
つまり試合を通じて自らの心・技・体を磨かなければならない身だ。
そこから逃げたら自分のブレイクスルーには立ち会えない。これは師匠の教えでもある。

今回は種目数も多く、各種目、技法の解像度を上げて丁寧に試合うことが肝要だと感じていた。

先に結果を書いておこう。
1・合気道 捕技乱取  敢闘賞(ベスト8)
2・合気道 綜合乱取  優勝(初優勝)
3・居合道 抜刀斬      1回戦❌
4・居合道 規定型      準優勝
5・居合道 抜刀試合  優勝(2連覇)
6・杖道     捕杖乱取  優勝(初優勝)
7・柔拳法 組手乱取  優勝(初優勝)

各種目毎にざっくり振り返る。
本当は皆の試合をゆっくり観戦したいのだけど……自分も一選手である以上そんなことは言ってられない。
YouTubeにて捕技も綜合もあがっている分に関しては確認させてもらったが、現場で実際感じるものと映像の中の乱取は全くの別物だ。

所感ではあるが、それが現場レポなのだろう。
忘れないうちに、観れたものを書いていく。


・捕技乱取


自分は手前のコートにてシードスタート。なので少し休ませてもらいながら1回戦を見学させてもらった。
皆いい動きをしている中で特に印象的だったのが、二個下のMコーチ。

よほど大会が不安だったのだろう……
自分を落ち着かせるように丁寧に、丁寧に捕を行う姿。
大会は残酷なまでに結果が出る場所である。
更に私達の様に現場で指導に当たる人間にとっては自らの発言や指導の責任を取る場所でもある。
「毎度毎度エラソーに指導しといて全然だめじゃん!」
とはやっぱり思われたくないじゃん?

……そこまで思い詰めることはないのだけど。笑

でも、自分というポジションを守り、確立する為にはある程度の成果が「初めは」必要だと感じるのはよく分かる。
だからこそ、彼の自分と向き合う姿にはある種の責任感、彼自身の成長を感じ、心を打った。
このまま継続して頑張ってほしいと切に思う。
結果も立派に敢闘賞。
相手もY主将であったこともまた、考えさせられる。
彼の視点からも近いことが言えるだけに、ね。ちなみにYくんは初の3位!
誠にめでたい。良かった良かった。ぬははは。

向こうのコートではAくん、Kちゃん達一時代を築いてきたベテラン陣が安心感ある落ち着いた捕技を見せる中、Iさん・I君などの気鋭の若者たちも活躍を見せていた。

特にU×I戦は遠目でしか見えなかったが時代の交差を感じさせる、とてもエモーショナルな対戦だった。
スタイルこそ違えど、立教の捕技を代表する選手であった/なっていく選手であろう2人の対決は甲乙付けがたいものだった。

さて、自分自身はというと……
Fくん、Hさん、Cさんと対戦。
まずFくん。
Fくんには綜合をやっている男子ならではのスピード感ある捕技を身に付けて欲しいので、そんなイメージをしながら試合をさせてもらった。
そんな投げをFくんはFUJIYAMAと敬称してくれたが、僕は絶叫マシーンには全く乗れない模様。
2回戦はHさん。1回戦勝てたこと(Sさんも良かった、2人とも内容が良かった)が彼女にとっては何より明るい材料ではないかと思っていたので、バッサリ気持ちよく介錯してやることでまた次からも頑張れるのでは……と拡大解釈し乱取った。
どうやら俺の逆腰車は審判受けしないらしく、自分的には少しモヤモヤしながら準々決勝へ。
奥のコートでは先に準々決勝まで終わっていた様で、皆がこちらのコートを眺めていた。

Cさんは四年生で、学生としては最後の大会。
全日本でも3位に入賞する実力者でもあるので、俺もいまのベストを尽くそうと思いコートに立った刹那、嫌ーな予感がした。
俺の目線のちょうど延長線上には、三年前のCちゃんがいて、目があってしまった。

いや、今から試合をするCさんが三年前のKちゃんなのかもしれない。

いずれにせよ、俺はいま、目の前のCちゃんと乱取をせねば。
……俺の嫌な予感は蹴捕抱腰車を飛び受けるように投げられた時に確信に変わった。
蘇る三年前のデジャブ、キラキラと伸びやかに力を発揮するCさん。
…もしかしたら俺は後輩の力を引き出す才能があるのかもな、と自惚れていたら試合が終わっていた。
Cさんはそのまま準決勝も勝ち上がり決勝へ。
向こうの準決勝はAくんがKちゃんを下した。
早く試合の映像が観たい。
パッと観た感じ、腕絡被りを入身腕絡にスイッチし対応する等、Kちゃんが非常にクレバーに捕をしていた印象なのだが……。
話は逸れるが、今のKちゃんに学生の頃の弾けるようなバネが戻ってきたら……
考えるだけでワクワクしてくる。
ただ、仕事で唯でさえ疲弊するのに、更に身体にムチを打っては楽しい武道も楽しくなくなる。今のペースでのんびり楽しんでもらえたら先輩として嬉しい限りだ。
決勝は落ち着き払ったAくんに軍配。
まだまだ老け込む歳じゃないからね。
頼むよ。

試合後Aくんから「大会で当たりたい」と言ってもらえて嬉しかった。
段審査では試合をした(三段、四段戦)ことがあるが、大会での対戦は確かにない。
ちなみに対戦成績は私の一勝一分である。
大会で当たったらどうやって崩そうか、面白がりながらお互い駆け引きに頭を凝らすのだろう。
それでいい。

・柔拳法・捕杖乱取


打・投・抑のタイミングと言った基本型はもちろん遵守した上で、今回は本来のコンセプトでもある剣術の理合を活用した「誘い技」を多用した。
反応とパターンで試合をしていた3年前にはまるっきり考えられなかったことである。
Hさんとの組手乱取を映像で見返してみると、なるほど意図は分かるが、柔拳法に関しては構えの形があまり誉められたものではないなとも感じた。
決勝戦は中段突の速いKくんと。
中段をケアしながら飛込で投技に入り、
抑込一本。

MKT先生主審の試合で情けない姿を晒す訳にはいかない。まさかこの日、K先生の主審を目の当たりにする等、想像もしていなかったし、ウルトラCにも程がある。
生まれてもいない70's~80'sの武田流を想起させる硬派な試合運び。
俺は感動で泣きそうだったよ。
学生の頃から孫のように可愛がってくださるK先生。この日は調子がいいのか、挨拶に行くと相槌代わりの裏拳を何発も頂いた。
何もかもがあの頃のままで、ちょっと可笑しかった。
そのK先生の下での柔拳法、捕杖乱取の決勝戦。
特に杖の相手はMKT先生の愛弟子、K先生。
これもまた運命なのかなと思いながら戦った。
もしかしたらこれが……、いやそれは不謹慎か……?
いずれにせよ、貴重な時間だったことには変わりない。ご指導ありがとうございました。

・綜合乱取


出来たことと出来なかったことがある。
誘い技に関してはバツッとハマって、自分でも驚いた。

また一つ、新しい技を身に付けられた。
試合経験は本当に有難い……

体の反射や反応は大切だが、年々変わっていくもの。
むしろ自分の反射を把握して、コントロール出来る位の技法を身に付けていかなければいけない。

出来なかったのは面の使い方、そこからの展開。長年のモヤモヤはまだまだ続く。

若い学生たちも道場生たち特有の速い打ちに度肝を抜かれていた様だった。
百聞は一見に如かずにである。
速い打ちに対応する為には自分も速く打てなければならない。

その事を何となくでも感じて、我々から言われるではなく自分たちで稽古量を増やしていくのが理想の形だと思う。

振り返れば19~20歳の頃、自分には何も出来なかった。
身体も大きい訳ではなく、特別上手い訳ではない。
だからこそ鏡の前に立ち、自分のイメージする打の追求に明け暮れた。
そしてそんな僕を指導者は遠くから見守ってくれていたのだと思う。
そんな日々の先に「何を」手に入れたのかは正直よく分からない。
もしかしたらまだ何も手にしていないのかもしれない。

だけどやってきて良かったと思っている。

さて、僕の対戦相手は若手(17~18)のK君、O君、そして決勝は後輩のNコーチであった。
残心やタイミング、投の型など皆それぞれに課題が生まれたはずだ。稽古を積み、
次の機会にはそれを100%俺にぶつけて欲しい。

また試合後には当会の大々々先輩より受返技法や蹴技、甲手の使い方による身体のコントロールまで、自分の中からは到底涌き出てきそうにない、とても有難い意見を伺うことが出来た。
また、「あまり形に拘りすぎない方が良い」とも……。
本当に有難い時間だった。

その他、武器型。

トピックスとしては規定型だろう。
優勝したAさんの涙。俺は見逃さなかったよ。
武道にはそれだけ人を夢中にさせる魅力があるんだと改めて感じて、とても嬉しかった。

自分の技術的な課題は身体のクセにもありそうだと感じたので、頂いた皆さんの規定型を眺めながらまたチマチマ稽古をしていこうと思う。

☆自由型

自分は出場しなかったが、合宿を通じて皆の型を見てきた。
型を通してペアとのコミュニケーションを観察させてもらったというのが正しいかもしれない。
技術的に優れたペア、上手くペースが合わないペア、上手くリードをしながら型を作るペア、経験を活かしたペアワーク……

在り方は様々である。けれど一同本番までにはしっかり仕上げてきたのだ。それが凄い。

自分も散々自由型はやってきた
(埼玉大会は二連覇した)が、やはりペアとのコミュニケーションが一番肝要な気がする。

型を通じて新たなコミュニケーションを作り、より強固な型に仕上げていく……
学生のひたむきな姿から、その尊さを改めて学ぶことになった。

・まとめっぽい何かpart.2

合計 7種目、全 18試合に出場した為、正直見切れなかった場面や偏った切り取り方になっているのは否めないことである。
しかし、武道を通じての相互関係構築やコミュニケートの在り方はコロナ禍を経た今も力強く芽吹いているのだと改めて感じることが出来た大会だった。

出場選手の一人として、改めて大会関係者の皆様に感謝申し上げます。

かつて主将だった頃、僕は自分の在りたい姿を武道を通じた「HUB」の様な存在と定義していた。
合気道部を通じて交差する人達の好奇心や探求心を擽ることで、合気道部そのものを力に満ちたものにしたいと思っていたからだ。
時は経ち、今は一社会人として、たまに稽古に参加するだけの一コーチに過ぎないが、その思いに変わりはない。
より力を蓄え、引き出しを増やし、来る出会いは今か今かと待ち構えている所だ。

もうじきに春がやってくる。
新たな青春の始まりに思いを馳せ、このレポートをおしまいにしようと思う。


お し ま い




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