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「コレクション」すること - 杉本博司

ご閲覧ありがとうございます!

前回の記事では時計コレクターとしても有名なミュージシャンのJohn Mayerのコレクションの基準についてお話ししました。

John Mayerは将来的な資産価値ではなく、時計メーカーの稀な発想と決断に投資しているのではないか。その熱い思いが他のコレクターを巻き込んで"John Mayer Watch"というニックネームがつくほどの時計が生まれたのではないかと思います。

今回も「コレクション」をテーマに、現代美術家である杉本博司さんについてお話しします。

杉本博司さんは1970年22歳で留学のため渡米。その徹底したコンセプトと高いプリント技術が評価され、1976年には若干28歳という若さで「ジオラマ」シリーズがニューヨーク近代美術館 (MoMA)に収蔵されます。

Gemsbok, 1980, Hiroshi Sugimoto
ジオラマシリーズより

その後1978年に日本の古美術品や民芸品を扱う古美術商ギャラリー「MINGEI」をソーホーに開業します。ニューヨークと日本を往復しながら古美術品を買い付け、販売する生活を10年ほど続けました。

これが杉本さんにとって生活をかけた「収集」のスタートでした。

最初は生活のためだった買い付けが、骨董屋や地方の社寺を回ったことが修業となり、作家として大きな影響を受けることとなります。今年の雑誌インタビューで杉本さんは美術品収集について以下のように答えています。

「買ったものから、滋養を吸い取るということです。そうやって、自分のつくる作品の質を上げていく。素晴らしい美術品を身近に置くとつまらないものをつくるわけにはいかない。もう目標とかライバルになるわけです。」

雑誌GOETHEより

すでに日本を代表する世界的な写真家である杉本さんは美術品収集を通して興味を天文学、物理学、宗教などを境目なく広げていかれました。
そして現在に至るまで、人類史において、動物から人間になりえた過程で得た人間の「意識」が杉本さんの全ての活動のテーマになっています。そして現在の制作活動は杉本さんの集大成である江之浦測候所の施設拡充のために行われています。

「作品をつくって売って、報酬を得たら、そのお金で江之浦のためにコレクションを増やしていったり、施設の拡充に充てていく。その繰り返しです。言ってみれば自転車操業かな」

雑誌GOETHEより
江之浦測候所


「本歌取り 東下り」

現在松濤美術館で行われている個展「本歌取り 東下り」とその図録には杉本さんの貴重な収集品とそれらを組み合わせた制作の経緯を伺うことができます。

本歌取りとは、本来、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌を作る手法のことです。

松濤美術館Web

日本文化である「本歌取り」と西洋美術から生まれた「コンセプチュアルアート」とは似て非なるものであるという発見がありました。

機会がある方はぜひ見に行って頂きたいです。

「宙景001」と杉本さんの隕石

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は杉本博司さんの「コレクション」についてお話しさせていただきました。
生計のために収集し、それを自身の作品制作に活かす。
アートコレクターとして憧れます。

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