【漫画】ファイブスター物語の音楽ネタ♯2
最初に書いた記事に動画や画像を貼り付けまくったら重くて更新しにくくなったので
もう一個描きます。
FSSの作中の音楽ネタというか主に永野護先生がフェイバリットに挙げていた音源紹介です。
音楽ネタ
ありがたいことに過去の企画で永野先生がフェイバリットの音源をピックアップした記事をブログに起こしてくれる方がいました。
永野護のルーツ8枚。
永野護の選ぶアルバム+20枚。
1993年発行のPUBLISHERS EXTRA/SKYにラジオ番組でセレクトされた音源が紹介されていましたがこちらの個人の方のサイト(月刊勤労少女)でタイトルを起こしてくれています。
当時、発売されてすぐ購入しましたがカラーの記事で読み応えがありました。
Wax Trax(米国の音楽レーベル)所属のインダストリアル系のバンドFini Trabeの欄で、プログレの話しも書かれていて出てきたバンド名も興味深かったです。
CAN、アモンデュールII、グローヴ・シュニット、ノヴァリス、バンコ、PFM、イ・プー、Gong、VAG(ベルベット・アンダーグランド)
ドイツのプログレッシブロック/シンフォニックロックバンドのノヴァリス(Novalis)ですが、音楽評論家の阿木譲さんが亡くなった時に永野先生が寄せたコメントで、永野先生が中学生の時に聴いていた阿木譲さんのラジオのテーマ曲がNovalisのSommerabendのサビだった事など書かれていました。
ちなみにカバーに使われてる印象的なアートはアメリカの画家マックスフィールド・パリッシュの森の少女。
阿木譲 Wikipedia
FSSの中のキャラは背が高いので声も低く、天照はロッド・スチュワートみたいなハスキーボイスという永野先生のコメントあったような。
ロッド・スチュワートはソロになる前はジェフ・ベックのThe Jeff Beck GroupやFacesなどのバンドに参加していたボーカリスト。日本の著名ミュージシャンも影響を受けた人は多い。
新設定の中でも特に印象に残るネーミングのツァラトウストラ・アプターブリンガー・パンツァー・カンプフロボーター
インスパイアされた元に触れるようなコメントは今のところないと思いますが、リヒャルト・シュトラウス作曲のツァラトゥストラはかく語りきからだとすると、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」のサントラで特に有名になった曲ですが、エルビス・プレスリーのライブの冒頭に演奏される曲としても知られていて、そちらからかも。
ツァラトウストラ・アプターブリンガー・パンツァー・カンプフロボーター(Zarathustra Apterbringer Panzer Kampf Roboter)の略称は Z.A.P.ですが、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)の略称はZepで、レッド・ミラージュから引き続き最強のハードロックバンドへのオマージュが込められているのかもしれません。
永野先生は若い頃、レコードジャケットやロックミュージシャンの他にモデルの山口小夜子さんや甲田益也子さんの模写もしていたとコメントされていましたが、甲田益也子さんはdip in the poolのボーカルでもあります。
山口小夜子さんと音楽といえばスティーリー・ダンのアルバムajaのジャケですが
1978年の日本で発売されたベスト盤にも山口小夜子さんの写真が使われていて、このジャケットは永野デザインの雰囲気と通ずるとこがありますね。
NT本誌2024年8月号のキュキィさま。
The Damnedと、New OrderのBlue Monday。
セリフの意味としては「無駄、抵抗。アイシャ」
「ふざけんな! 新秩序(天照の比喩?) 死ね、月曜日に」かな?
ツイッターでどなたかがアップされてた永野先生が語ったロボットアニメ=ハードロック論。
あらためてハードロックはしっかり聴いてみようと思います。
FSSの特徴の一つにロボットの爆音の動作音の他に細かい摩擦、振動、衝撃音など一つのコマに複数の音のレイヤーが表現されている所がありますが、永野先生がハードロックのバンド活動でライブハウスのステージ側の外音と内音が混ざった混沌とした状態を経験されてる事のフィードバックもあるような気がします。
「Please,Mr.Rock'n Roll.」ザ・ルーツ・オブ・ファイブスターストーリーズ
過去に永野先生が所有するLPを並べて語るNT本誌の企画がありましたが、検索したらツイッターでNT本誌のページの一部をツイートされてる方がいました。こちらもありがたい。自分も手元に残してたら良かった。
企画タイトル通りロックが多めのセレクト。
多分、敢えて読者がFSSから連想するプログレは少なくしてハードロックと、まさに80年代なポップスとニューウェーブが多めにセレクトされているようです。
メカデザイナー業を始めてからエルガイム、FSSの単行本3巻辺りである80年代末までの制作時のBGMって感じがしますね。
永野先生の右手にはNeu!の3rdアルバム、左手にはNew York Dollsの1stアルバム。
Neu!の下の黒地に貝殻のジャケはSPKの1988年のアルバムOceania - In Performance 1987.
初期は死体写真を使ったアートワークと強烈なノイズと金属音が渦巻く作風でしたが、この頃はダークアンビエント/リチュアル/ポストインダストリアルと呼ばれる音に。
トッド・ラングレンのLPの周りのとか、全体的に上の方が分からないのが多くて気になる...
ニューヨークドールズは特に音だけではなく動画も観た方が楽しいです。
最初の記事に書ききれなくて分かる範囲で、特に気になるのをピックアップします。
FSSのMHベルリンの名前の元ネタと思われる80年代のニューウェーブ/シンセポップバンドBerlinの86年のアルバムCount Three & Pray
初期はもっとテクノポップ的でしたがこのアルバムの頃はスタジアムバンド的なスケール感のある音になっています。映画トップガンのテーマソングも収録。
Scritti Polittiの1988年のProvisionに収録されたシングルBoom! There She Was
元々パンクロックのブームの中で結成されたバンドでしたが米国のブラックミュージックに影響された当時の最新デジタル機材を駆使した音作りが特徴でこのアルバムではシンクラビアが使われたそうです。内部シーケンサーの操作が難しく、それが独特のアレンジに繋がったと言われています。
代表作と挙げられる事が多いのは一個前のアルバムCupid & Psyche 85
一番目立つくらいの所にあるStatus Quoの1973年のアルバムHello!
イギリスのブルージーなロックンロールバンド(ジャンル用語としてブギーロックとかハードブギーと呼ばれたりする)
ニューヨークドールズのLPの下にあるのはSuzi Quatroの74年のアルバム。
レザーのジャンプスーツがトレードマークだった女性ハードロッカーの先駆けの人。
Public Image名義でリリースされたP.I.Lの1978年の1stアルバム。
セックス・ピストルズのジョニー・ロットンが本名のジョン・ライドンとなって始動したバンド。
ピストルズの延長のパンクロックを求めるファンの期待を振り切ってノイ!などのジャーマンロックとダブの影響のあるアートロック的なアプローチをしました。代表作と呼ばれる事が多いのは2ndのMetal Box。3rdアルバムのThe Flowers Of Romanceも必聴。
ボディビルダーの筋肉ジャケはFini Tribeの1987年の12インチシングルでCanのI Want Moreをごっついビートでカバーした曲を収録。
これきっかけで永野先生はFini Tribeを知ったそうです。
その後に出たElect-roluxの12インチも。
NYパンクを代表する名盤、Ramonesの1976年の1stアルバム。
オーストラリアのハードロックバンドAC/DCの1980年作Back In Black
ロックの名盤みたいな企画には必ず入る一枚。
FFCでお馴染みイギリスのブルースロックバンドFoghatは1977年のLive盤も。
Fool For The City(曲)とSlow Rideも収録。
ライブ盤といえばAmon Düül IIは意外にもスタジオ盤ではなく1973年のライブ盤のLive In Londonをセレクトされていました。
スタジオ盤よりドライブ感のあるハードロックを堪能できます。
ビートルズ関連では、
ジョージ・ハリソンのDark Horse
ビートルズのメンバーの中でも特にインドに傾倒していた人ですが、あらためて見ると凄いジャケですね。小学生の頃のクラス写真をコラージュしたそうです。
ちなみにFar East Manという曲が収録されていますが特に日本を指した曲名という訳ではなく共作したロン・ウッドが着ていたTシャツのプリントされていた言葉から取ったそうです。
ポール・マッカートニーのバンドWings – Red Rose Speedway
リンゴ・スターのGoodnight Vienna
不思議なというか、かなり変なデザインのジャケ。
70年代ロックに戻って、アメリカのポップ職人Todd RundgrenのアルバムTodd
シンセサイザーを取り入れた複雑な音作り。
邦題は未来から来たトッド。
スーパーギタリストのジェフ・ベック参加のスペシャルバンドBeck, Bogert & Appice Beck
T. Rexの1972年のアルバムThe Slider。
ロック史に残る一枚。
ブリティッシュ・インヴェイジョンのバンドHolliesの日本盤コンピレーションアルバムRemember The Liverpool Sound 2
アメリカの人種混成ファンクバンドのWarのアルバムWhy Can't We Be Friends?
レゲエ調のアルバムのタイトルトラックは日本を旅した時に発想したアイデアで作られたらしい。
このバンドの最初の方はアニマルズのエリック・バードンも参加。
Buckingham Nicksの唯一のセルフタイトルアルバム。1973年作。
その後はFleetwood Macに合流。
イギリスのバンドThe Kinksの1977年のアルバムSleepwalker
60年代半ばにデビュー。バンドを知らない人でも何処かで聴いた覚えがあるような有名曲は60年代の音源に多いです。ブリットポップなど後の世代への影響が大きなバンド。
Kevin Rowland & Dexys Midnight Runners の1982年のアルバムToo-Rye-Ay
ヒット曲Come On Eileen(カモン・アイリーン)収録。
もしかするとアイリーン・ジョルの名前の元ネタになってるかも。
ケルト音楽の要素があり、ホーンセクションが居る大所帯のバンド。
企画の写真の中には無いようですが、ケルト音楽といえばシオの門番(チーフティンズ)の元ネタの可能性のあるThe Chieftains(チーフタンズと日本語表記されることの方が多い)
有名ボーカリストとコラボした音源もありますが初期の抽象的なアートワークのジャケのアルバムが良いと思います。
Rick Derringerの1975年のアルバムSpring Fever
上手い事撮れてるのもありますが男性だけど美女に見えるジャケはFSSの美的感覚にも影響が強そうですね。
検索しても知りましたがハルク・ホーガンの入場曲のリアルアメリカンはこの人の作曲なんですね。
天照のイメージの元にもなったEdgar Winterとの共演ライブ動画。
ラモーンズの下にあるのはたぶん、
Joni Mitchellの凄腕のジャズ系のプレイヤーがバックを務めたライブ盤Shadows And Light。
スタジオ盤は代表作はBlue。
フランスの女優Isabelle Adjani(イザベル・アジャーニ)の1983年のセルフタイトルのアルバム。
まさに欧州ポップスといった内容。
映画ポゼッションの頃より前の若い頃のビジュアルは、FSSの作中のエルメラ・コーラスや可憐なファティマのイメージに多少影響あるかも。
スコットランドのニューウェーブバンドAltered Imagesの1983年のアルバムBite。
元々はスージー・アンド・ザ・バンシーズの公式ファンクラブに所属していただけあってもう少しポストパンク的な音で、最後のオリジナルアルバムになるこの作品だとかなりポップなニューウェーブサウンドになってます。
FSSの男性の騎士はプログレ/ハードロックのミュージシャンのイメージで、女性の騎士はニューウェーブ系の女性ボーカリストのイメージを感じます。
目立つ場所にQueenのボーカルFreddie Mercuryの1stソロアルバム
Roxy MusicのボーカルBryan Ferryのソロアルバム(カバーアルバム)は2枚
スロベニアのPost Industrial系グループLaibachの1986年のアルバムNova Akropola
音楽的にも個性を確立した代表作。
そしてその確立した音楽性をアルバム毎にガンガン変えていく。
この辺りのRevolting Cocks、Swans、初期Fini Trabeなどのヘビーなインダストリアル系の音は荒野の砂埃舞うトラフィックス1のエピソードによく合いますね。
NT本誌1987年10月号扉絵よりBGM紹介
・三姉妹 Emerson Lake & Palmer - The Three Fates(Clotho,Lachesis,Atropos)1970年作。
・エスト Journey - Little Girl
ファッション・デザイナー高田賢三が監督した映画 夢、夢のあとのサントラとして制作されたアルバムに収録。
・ラキシス Eric Clapton - Layla
※クラプトンがメンバーだったDerek & The Dominosのアルバム収録曲。邦題はいとしのレイラ。当時、ジョージ・ハリソンの妻だったパティ・ボイドを想って作られた曲。
・U2 - Sunrise ※アルバムThe Unforgettable Fire(邦題:焔)レコーディング時に制作された音源のThe Three Sunrisesの事かな(シングルWide Awake in America収録)
・IRON MAIDEN - Aces High
・Amon Düül II - Metropolis
・その他、Sex Pistols、TV(※Tom VerlaineのTelevisionの事かな)
ダムド、ラモーンズ、パンク多し
・シャンソン、フレンチポップ。イザベル・アジャーニとか。
・クラシックはストラヴィンスキー、チャイコフスキー、ムソルグスキー
・FSSのイメージアルバム
YouTube Playlist
曲を絞ってYouTubeのプレイリストも作りました。
the Beach Boy/Pet Sounds (1966)
The Beatles/Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (1967)
The Rolling Stones/Their Satanic Majesties Request (1967)
永野先生が過去の企画などでフェイバリットに挙げている音源の中で特に60年代後半にリリースされた三つのロックアルバムですが、
ペットサウンズは、ビートルズのアルバムのラバーソウルを聴きシングル曲をコンパイルしたものでは無くアルバム全体で一つの作品とした内容に感銘を受けたビーチボーイズのブライアン・ウィルソンがそれに匹敵する作品を目指し、緻密なスタジオワークを駆使して殆ど一人で作り上げたアルバム。
それに刺激に受けたビートルズが作ったのが名盤の誉高いサージェント・ペパーズで、さらにそのサージェント・ペパーズに対抗する為に作られたのがローリングストーンズのサタニック・マジェスティーズ(初のセルフプロデュース作でしたが、ノリの良いブルージーなロックンロールが無くセールスが振るわず。後に再評価されるも賛否両論の作品)
共通するのは複雑な多重録音と編集、大きく取り入れられたロック/ポップスの文脈以外の音楽の要素、ジャンル化する以前のサイケデリック(ドラッグと神秘主義)
FSSの作中にネーミングなどで直接引用されたりは無さそうですが、当時の音楽界の流れを踏まえて聴くとより面白いかもしれません。
ついでに書くとLed ZeppelinやDeep Purpleの1stアルバムは1968年。
プログレ系のYesやKing Crimsonの1stアルバムは1969年。EL&Pは1971年。
当時のロックは録音技術と併せてかなりハイペースで複雑かつパワフルに進化していってますね。