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15th-逆さまの悪魔-

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非常に苦しい中学時代を終え、高校に入学した琴音は新しい生活を楽しもうとしたが、思うようにいかない日々の中で食べる意欲を失ってしまい、摂食障害に陥る。 —これは自分を奪われた少女た…
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記事一覧

第三十一話「ありふれた一日のはずだった」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

※表紙画像がアップロードできないので一旦画像なしで投稿いたします  麻理恵と遊んだ日から…

文野麗
2日前
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第三十話「麻理恵に気づかされる」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音が寝る前寝転がってネムのブログを読み返していたら、麻理恵からのメッセージが入った。…

文野麗
4日前
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第二十九話「歌羽の吐露」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 歌羽は初めて自分の過去を語り出した。  私は小学校のときクラスでひどいいじめに遭ってい…

文野麗
4日前
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第二十八話「琴音の吐露」長編作品「15th-逆さまの悪魔-」

 ほんの少しだけ意識を変え、医療用の栄養ドリンクを我慢して飲むようにしたところ、悪化する…

文野麗
6日前

第二十七話「心に寒風が吹いて」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 カウンセラーの女性は、いつも通り白衣姿で病院の待合室に現れた。琴音は珍しく笑顔を見せ、…

文野麗
11日前

第二十六話「自分との対話」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音は書道教室で、この頃更に細くなり静脈が透けて見える右腕を動かしながら、半紙に向かっ…

文野麗
12日前

第二十五話「何度も着せられた濡れ衣(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音が中学生の頃、部活では楽器ごとのパート別に練習する時間があった。  この日は秋だった。三年生は琴音と豊子の二人で、他に二年生と一年生の部員が二人ずつ、全員で六人のパートメンバーがいた。一日一日、みるみるうちに日が短くなっていって、トランペットパートが練習している部屋の外は薄暗かった。明かりは白色灯のはずなのに部屋の中はどこか赤味を帯びていた。暖房が音を立てながら暖かい空気を巡らせていた。  トランペットパートは冷暖房が直接快適な温度に保ってくれる教室の一室を練習場所

第二十四話「麻理恵の近況」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音は少しだけよそゆきの格好をして、母に連れられ、麻理恵と麻理恵の両親が住んでいる、藤…

文野麗
2か月前
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第二十三話「学校でも問題になる」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 どうしてこのつらいときに限ってネムは私の傍にいてくれないのだろう。琴音は夜中にベッドの…

文野麗
2か月前
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第二十二話「麻理恵事件その後(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 中学二年のとき、麻理恵の家出騒ぎと破局、人工中絶手術に琴音は多大なるショックを受けた。…

文野麗
2か月前
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第二十一話「周囲からの孤立」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 歌羽は不機嫌そうに、唇をすぼめて琴音と目を合わせずにくぐもった声で言った。 「でも琴音…

文野麗
2か月前
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第二十話「過去の顛末」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 過呼吸の発作は治まったが、摂食障害のせいで危ない状態に陥ったのは間違いないので、琴音は…

文野麗
2か月前
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第十九話「発作再び」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 夏休みは終わり、学校に行く日々が戻ってきた。あっという間に一ヶ月が過ぎ、十月の文化祭が…

文野麗
2か月前
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第十八話「舞台に私の席はない(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 中学時代、琴音は顧問を激怒させたあのとき以来、部活で一度も本番の舞台に出してもらえなかった。身体が回復して十分に演奏できるようになっても一向に認められなかった。表向きは、琴音が本番中に過呼吸の発作を起こすことを危惧して、ということになっていたが、実際には顧問から琴音への懲罰であることを、琴音本人だけでなく部内の誰もが知っていた。  夏から秋にかけて数回あるコンクールのときは、出番の少し前に部員たちが舞台裏に入ると、琴音は一校分ガラリと空いた座席に一人だけ残され、やがて光を