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サクセスリリースは実現できたのか!? ~理想と現実の答え合わせ~
このnoteは、CS HACK Advent Calendar 2024の12月11日の記事として投稿しています。
他の方のnoteもぜひご覧ください!
はじめに
こんにちは!
STORES 株式会社でカスタマーサクセスチームのマネージャーをしている伊藤(@cyan55481340)です。
私たちSTORES のカスタマーサクセスチームは、「理想の顧客体験を実現するための北極星」を定めるべく、今年の春に「サクセスリリース」を発行しました。
サクセスリリースは、『私たちSTORES のサクセスが、将来どのような状態になっているか』をプレスリリース形式で予測した戦略書です。
2024年の年末にどういった状態になっているか・何を実施したかという前提で作成することで、チーム全員が目指すべき未来の姿を具体的に描き、日々の業務をその方向に合わせて進めるためのコンパスとしての役割を担っています。
作成背景などは↓のnoteにまとめているので興味がある方はご覧ください!
サクセスリリースをメンバーと完成させることも重要ですが、それ以上にサクセスリリースを活用してどう現場に活かし、顧客体験を向上させるかが鍵でした。
この記事では、サクセスリリース発行後に実施した具体的な取り組み、そこから得られた成果、さらに見えてきた課題とこれからの展望について「理想と現実の答え合わせ」をしていきたいと思います。
想定読者
この記事の主な想定読者は以下の方々ですが、これらに該当しない方でもご興味あればぜひご覧ください!
・今年1年のカスタマーサクセス活動の振り返りをしている方
・来年のチーム方針や取り組みについて考えている方
・カスタマーサクセスとして提供するアウトカムについて考えている方
取り組んだこと
サクセスリリースを単なる「宣言」で終わらせないことを意識し、サクセスリリースに記載されている内容も含めて以下の3つの施策を中心に活動しました。
①チーム内・他部署への周知と巻き込み
まず初めに行ったのは、サクセスリリースをもとにしたチーム全員での未来インタビュー形式のワークショップです。
ワークショップでは、「2024年末の私たちがどんなオーナーさま(導入顧客)にどのような価値を提供しているか」というテーマに沿って、複数のケーススタディを話し合いました。
こうした未来視点のディスカッションをすることで、現状との差分をより明確に把握して取り組みのスピード感を改善するなど、日々の業務だけでは中々得られない視野の広がりをもたらしました。
他部署のメンバーに対しても、サクセスリリースの内容とあわせて主たる取り組みについて個別・全体それぞれに展開していきました。
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②アウトカムを起点にしたカスタマーサクセス支援への変化
サクセスリリースの目標を単なる「理想」に留めず、現実に落とし込むためには、組織としての変化が必要でした。
STORES の場合、その根幹になったのが『アウトカム』を起点にした支援への挑戦です。
私たちはコンパウンドSaaSの強みを活かして「コンパウンドサクセス」の取り組みに挑戦していることもあり、
複数製品の利用によって生まれるアウトカムを軸に、支援方法をアップデートさせていきました。
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具体的には、コンパウンドSaaSとして複数の製品を取り扱うSTORES が提供できる価値は何かという『アウトカムマップ』の作成、STORES を導入いただくオーナーさまの売上構造の分解やKSFの特定による顧客理解、顧客の特性に沿ってアウトカムの実現を支援する『サクセスプラン』の策定を行いました。
各企業さまのアウトカムの達成状況の把握から始め、さらに深いアウトカムを提供するためにサクセスプランを活用してディープサクセスへ導いていく。これを現在もひたすら繰り返しています。
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③ 他部署との共有と連携
サクセスリリースを通じて、他部署との連携強化にも注力しました。
サクセスリリースの内容を実現するためには、STORES が提供できるアウトカムをアップデートし続けていく必要があります。
STORES が今できることという観点においては、事業企画メンバーと一緒にアウトカムに沿った事例創出に注力をしていきました。
また、営業メンバーとはアウトカムの内容、過去の案件の成功/失敗要因分析の結果を共有し、導入時に合意を取るべきアウトカムの内容のすり合わせを行なうことでPOC案件の成功確度を高める取り組みを協働していきました。
理想的なLand & Expand戦略の実現にあたっては、Gainsightの弘中様の記事を大変参考にさせていただきましたm
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得られた成果
取り組みの結果、目に見える成果がいくつも得られました。その一部を以下にご紹介します。
① チーム内の共通認識の醸成
サクセスリリースを基にした活動を通じて、チーム全員が「私たちが目指すべき未来像」を共通認識として持つようになりました。
たとえば、月次の振り返りや新しい施策を検討する際にも、「それが目指す未来にどう貢献するか」を明確な判断軸として持てるようになり、意思決定の精度が向上したように思います。
新メンバーにも入社タイミングでサクセスリリースの内容が共有されることで、チームの活動方針の浸透に役立ってくれました。
②オーナーさまへの意識の変化による「予約屋さん」からの脱却
昨年までは業務効率化の側面に重きを置き、ディープサクセスの実現に向けた取り組みはやり切れていないというのが実情でした。
それがアウトカムを起点にして、オーナーさまのお商売により深く入り込んでご支援する意識醸成ができたことがサクセスリリースによる一番の変化であり、成果だったと感じます。
今ではチームの定例ミーティングやオーナーさまとのお打合せの場においても、業務効率化にとどまらず、事業成長に貢献するための観点で議論が交わされるようになりました。
実際にオーナーさまからも、単価が向上した/会員継続率が向上した/売上が伸びた!と嬉しい言葉をいただく機会が増えており、徐々にではありますがアウトカムを起点にした支援が定着しつつあるように思います。
ほんの一例ですが、オーナーさまから実際にいただいたお声もご紹介させてください。
③ チーム間の連携強化
皆さんもご認識されているように、カスタマーサクセス部だけでカスタマーサクセスの状態を実現させることは難しいと思います。
一方で、他部署と「情報共有」は出来ているものの、一歩踏み込んだ「連携」まで出来ている企業が少ないと話を聞くこともあります。
この他部署との連携においても大きな変化があった1年でした。
開発部とは、機能要望の整理をする際の判断軸に「どのアウトカムを達成しうるものなのか」という内容が追加されるようになり、
営業においては、前述したように理想的なLandの実現のために導入時に合意すべきアウトカムの内容の認識をすり合わせることができました。
これにより、適切な期待値と適切な運用STEPが初期段階から合意形成できているケースが増加し、導入後のExpand(導入部署・店舗の拡大)がしやすくなったように思います。
おまけ:メンバーからの声
実際にサクセスリリースの発行・内容実現に向けたアクションについてチームメンバー・営業メンバーからも声をもらっています。
・サクセスリリースの内容の通り、営業段階から「アウトカム」という共通認識を持てたことで、顧客へ提案→支援する内容に一貫性をもたらすことが出来るようになった。(カスタマーサクセス担当)
・アウトカムマップに沿って顧客の現在地の把握が出来るようになったことで、次に支援すべき内容が明確になった。(カスタマーサクセス担当)
・営業段階で適切なアウトカムで合意するようにしているため、オーナーさまの期待値がズレにくくなったと感じる。
また、オーナーさまが何を期待して導入するかをより把握しやすくなったことで、類似ケースのお客様に対しての提案にも活かせており、顧客満足度の高い受注に繋がっていると思う。(営業メンバー)
・アウトカムに基づくことで、営業側も受注後の継続、エクスパンション、アップセルを視野に入れた商談を行う必要性を再認識することが出来た。(営業メンバー)
課題と学び
一方で、もちろん課題も浮かび上がりました。
サクセスリリースを発行して終わりではなく、定期的に更新しなければ次第にその意識が薄れてしまうという点です。
特に変化の多いスタートアップにおいては定期的なリリースの修正が必要不可欠となるため、サクセスリリースを「静的な指針」ではなく「動的な戦略ツール」として機能するように来年は進化させていこうと思います。
答え合わせ・これからの展望
さて、長くなりましたがいよいよ理想と現実の答え合わせです。
実際に約1年取り組んできて、サクセスリリースに記載した各項目の60%ほどは達成できました。
残念ながらまだ達成できていない項目もありますが、ひとえにオーナーさまの事業成長に向き合ってくれるメンバーの皆さんとSTORES にご期待いただいているオーナーさまのおかげで日々進歩することが出来ています。
いつも心から感謝しています。
とはいえまだまだ道半ば。
サクセスリリースも新たにアップデートし、オーナーさまのこだわりや情熱、たのしみに駆動される経済をつくるために来年もさらにたくさんの挑戦をしていきます。
この記事が同じようにカスタマーサクセスに取り組む皆様のヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Just for Fun.