LGBTは法律上どのように扱われる?
LGBTという言葉をご存知でしょうか?Lはレズビアン(女性同性愛者)、Gはゲイ(男性同性愛者)、Bはバイセクシャル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(生まれた時の性と、自覚する性とが異なる性の不一致)を意味します。いわゆる性的少数者を総称的にまとめた略語です。
こうした性的少数者は、社会に適合していく上で、普段の生活にはさまざまな障壁があります。そして、法律においても、その人らしく生きていくことを尊重しつつ、現在の法制度とどのように折り合いをつけていくのかが課題となっていると言えます。
今回は、こうした性的少数者が色々な場面で遭遇する法的問題について、現行法制度上どのようになっているのかをまとめます。
トランスジェンダーの性別の変更は?結婚は?そのほかの法的問題は?
性同一性障害という言葉は、多くの人が知っていると思います。すでに述べたトランスジェンダーを意味します。
これについては、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」があり、一定の要件を満たしている場合、家庭裁判所での審判を経ることで「民法その他の法令の規定の適用については、法律の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす」(同法4条)という法的効果が得られます。
したがって、例えば男性が女性になると仮定すると、女性として結婚できたり、(体は元々男性であるため懐胎はできないので、子を設けようと思えば)養子縁組できたりします。また、戸籍上も女性として登録されることになります。
その他には結婚していれば、パートナーの死亡時には相続権を得ることになります(民法890条参照)。
もっとも、要件が厳しく、中でも「現に婚姻をしていないこと」「現に未成年の子がいないこと」「生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」(同法3条)が問題になります。
例えば、トランスジェンダーであることを秘して結婚していたり、「やはり自分と血縁関係を持つ子供が欲しい」と考えて子供をもうけていたりすると、性別の変更は認められなくなります。
生殖腺を欠くとは、要は性転換手術を意味します。こうした部分を乗り越えるのも困難な点と言えます。
ゲイ、レズビアン、バイセクシャルの結婚は?そのほかの法的問題は?
トランスジェンダーと異なり、ゲイ、レズビアン、バイセクシャルは「元来の性」について肯定していて、性を変更することを想定していません。
そのため、トランスジェンダー(性同一性障害)のように異性への転換を前提として、現行法制度と折り合いをつけるような方法が出来ない点が課題となります。
まず、結婚については日本国憲法24条1項で「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」と規定されているため、憲法を改正しなければ同性結婚は認められないという説があります(トランスジェンダーの場合、性を転換することで両性の合意に基づく婚姻とみなしていることになります)。
一方で、この条文は、家族関係形成の自由・男女平等の理念を家族モデルに取り入れることを目的としたもので、憲法制定当時に同性婚を禁止する意図はなかったとして、同性結婚は憲法上禁止されていないという説も存在します。
婚姻できないとなると、民法で認められる婚姻の効果として配偶者の相続権もありません。
当然、元来の性を維持しているわけですから戸籍上も元来の性で登録することになります。
こうした法的な障壁をクリアするために、家族としての法的効果(例えば相続権を得る、扶助義務を認めさせたいなど)を得るために、養子縁組を行うなどの方法はあります(民法727条)。
ちなみに、成年同士であっても養子縁組は可能です(民法793条。ただし、年長者が養親になります。1日でも早く生まれていれば養親になれるため、同年齢でも問題ありません)。
養子縁組によって相互の扶助義務や、相続関係なども生じます。
その他の方法として「養子縁組は要らないが、長年連れ添ったパートナーになんとか財産を遺したい」という場合であれば、遺言を活用すれば、婚姻関係が無くても財産を分け与えることも可能ではあります。
もっとも、どれほど愛していても、その「証」として法的に結婚するということができないとすれば、それ自体が悩みの種と言えます。
ただ、同性のパートナーシップを尊重する法的な取り組みとして、例えば東京都渋谷区の「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」における、パートナーシップ証明書を発行するというものがあります。
戸籍などの登録はできないものの、区が発行する「パートナーシップ証明書」を得ることができ、パートナーとの絆や愛の「証」を受け取ることは可能です。
まだ、全国的な議論には発展しているとは言いがたいですが、法制度の整備に向けて、小さな一歩が踏み出されたと言えるのではないでしょうか。