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【読了】薩摩藩士、中村半次郎の魅力に迫る 『人斬り半次郎 幕末編』 池波正太郎
幕末の混乱で、日本中に暗殺や粛正があった時代に、四大人斬り、と言われた藩士がいます。
田中新兵衛(薩摩藩)
河上彦斎(肥後藩)
岡田以蔵(土佐藩)
中村半次郎(薩摩藩)
この本は、薩摩藩の中村半次郎の半生を描いたものです。
幕末編、とあるように、薩摩田舎で貧しい暮らしをしていた半次郎が、剣術の腕を磨き、時代の波に乗り世の中に出ていく様子が描かれています。
池波正太郎の半次郎は、天真爛漫な子供のようなところがありながらも、類まれなる努力家であり、西郷隆盛に引き立てられていく、まさにサクセスストーリーを地で行くような人物です。
半次郎は、京都でさまざまな体験をします。
剣術の腕に磨きがかかり、その働きが評判を呼ぶ一方で、町娘に淡い恋心を抱いたり、法秀尼との特別な関係を築いたりします。
この法秀尼は、半次郎にとって、恋人であり、師匠でもあるんですよね。
ちょっと生々しい感じのシーンもあるのですが、半次郎に文字の読み方、書き方を教えたのはこの法秀尼なんです。
「ま、手本もええが、折あるごとに、他人の書いた手紙やら、書やら、上手やと感じたものをようお見やして、その書体やら読み方やらを、納得のいくまでおぼえこむことや。わからぬときは知っている人に遠慮のう訊かなあかんえ。ものを習ういうことに恥ずかしいことは何もないよって──」
素敵な師匠さんです。
次第にいそがしさを増してくる勤務の中で、半次郎は、その公務と勉強との二つを、どちらも人の三倍、四倍の努力をかたむけてやったのである。
中村半次郎はとんでもない努力家です。
元々の身分が低い生まれのために、自分を高める努力が半端ないんです。
その鍛え上げた腕が、大いに薩摩藩の役に立つことになります。
特に西郷さんに対しては子供のように素直で、返事がいつも
「はアい」
なんですよ。文字だけで見ると可愛らしいですよね。
もともと、半次郎は美意識のゆたかな性格を持っていたらしい。 現在も残っている彼の書などを見ると、彼のものとは思えぬ美しい筆蹟であって、墨の濃淡、運筆のかろやかさなぞにも、すぐれた彼の美的感覚が、うかがえるのである。
加えて、美意識が豊かなんですね。
かなり出来るヤツ(失礼!)じゃないですか。
おまけになかなかのイケメンだそうです。女性にモテそうですね。
私は、コミック『だんドーン』を愛読しており、このような半次郎を脳内イメージで読みすすめました。
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著者の池波氏も半次郎のことをかなり気に入っておられるのではないかと感じました。
文章になんとなく愛情があるように思うのです。
素直でまっすぐで強い、そんな半次郎の次の活躍は賊将編へと続きます。