#268 「アップガレージ事件」東京地裁(再掲)
2010年9月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第268号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【アップガレージ(以下、U社)事件・東京地裁判決】(2008年10月7日)
▽ <主な争点>
店舗の売上に応じて支給される販売手当は割増賃金となるか等
1.事件の概要は?
本件は、従業員であったXがU社に対し、雇用契約および労働基準法に基づき、平成17年5月から18年9月までの残業代(時間外勤務手当合計153万2459円)等を求めたもの。
これに対し、U社は販売手当の支払いをもって時間外および深夜の割増賃金の支払いがあった等と主張し、争った。
2.前提事実および事件の経過は?
<U社およびXについて>
★ U社は、平成11年4月に設立された自動車用部分品および附属用品の輸出入、販売ならびに仲介等を業とする会社であり、組織上、本社のほか、自社が出資して運営管理をする直営店舗と別のグループ会社が出資して運営管理にあたるフランチャイズ店舗の2つの形態の店舗で構成されている。
★ Xは、17年4月、U社との間で、Xが同社の業務に就労し、その対償として賃金(基本給と諸手当)の支払いを受ける旨合意した(以下「本件雇用契約」という)。なお、Xは19年3月にU社を退職した。
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<U社の賃金体系の概要、販売手当の支給根拠等について>
★ U社の就業規則に基づく賃金規程の定める16年10月以降に導入された新人事システム(以下「新人事システム」という)を反映した賃金体系の概要は、以下のとおりである。
(ア)直営店舗に就労する従業員の賃金については、日給月給制とされる基本給(職能基礎給、職能ランク給)のほか、役職手当、家族手当、通勤手当、販売手当で構成される。そして、販売手当は、売上目標達成手当、粗利益額目標オーバー手当、営業利益額目標オーバー手当、ダブル達成手当、トリプル達成手当で構成される。なお、本社勤務の従業員の賃金は基本給、諸手当(通勤手当のみ)および割増賃金で構成されている。
(イ)売上目標達成手当は、当該店舗の売上目標を達成した場合に役職に応じて一定額が支給されるものであり、粗利益額目標オーバー手当は、当該店舗の粗利益目標額(売上目標額に55パーセントを乗じた金額)を超えた場合に役職に応じて支給されるものであり、営業利益額目標オーバー手当は、当該店舗の営業利益目標を達成した場合、目標額超えた額に対し、所定の計算式により算定される金額(役職によって異なる)が支給されるものであり、ダブル達成手当は、売上目標、粗利益目標、営業利益額目標のいずれか2つを達成した場合に、その2つに対する上記各手当の合計額の25パーセントが支給されるものであり、トリプル達成手当は、売上目標、粗利益目標、営業利益額目標のすべてを達成した場合に、各手当の合計額の50パーセントが支給されるものである。
▼ U社は18年10月、賃金構成を変え、直営店舗の従業員の賃金についても、売上達成手当等(従前の販売手当の額に比べ相当程度減額されている)のほかに、時間外勤務手当を支給することとした。
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<U社の店舗における出退勤管理の状況等について>
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