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#520 「ビックカメラ事件」東京地裁(再々掲)

2020年9月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第520号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【ビックカメラ(以下、B社)事件・東京地裁判決】(2019年8月1日)

▽ <主な争点>
問題行動を繰り返す社員に休職命令等の措置をとらず行った解雇など

1.事件の概要は?

本件は、B社との間で雇用契約を締結し、販売員等として勤務していたXが平成28年4月15日付でされた解雇は無効であるとして、同社に対し、(1)雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、(2)28年5月分から30年3月分までの賃金として合計526万7376円ならびに同年4月分以降の賃金として毎月21万9474円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<B社およびXについて>

★ B社は、カメラ、ビジュアル製品、オーディオ製品等の販売を事業内容とする会社である。

★ Xは、平成14年12月、B社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、家電販売店の売場やレジにおいて商品の販売等の業務に従事していた者である。

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<Xの問題行動、本件解雇に至った経緯等について>

★ Xの勤務については、無断で早退する、長時間にわたり売場を離れる、勤務時間中に食堂で休憩する、インカムを用いて著しく不適切な発言を行う、上司に対して中傷的な言動をするなどの問題が頻繁に見られた。

▼ B社は27年7月、Xの問題行動が疾患に起因する可能性が考えられるが、産業医の意見による専門医の受診が1度しか行われておらず、問題行動が継続しているとして、就業規則36条3項に基づき、Xに対し、専門医を受診して診断書を提出するよう命令した。

▼ Xは専門医を受診し、同医師から心理検査を受けるかどうかを尋ねられたが、これを拒み、診断書が作成されるには至らなかった。

★ Xの上記言動に対し、B社はその都度注意し、27年6月、28年1月に勤務改善指導書を交付し、さらに27年8月には譴責の懲戒処分、同年10月には出勤停止(7日)の懲戒処分、28年3月には降格(降給)の懲戒処分を行ってきた。

▼ B社は28年4月15日、Xに対し、就業規則違反を繰り返しており、再三の注意・指導にもかかわらず改善がされなかったことなどを理由に、就業規則44条2号および3号に該当するとして、解雇する旨を通知した(以下「本件解雇」という)。

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<B社における社員就業規則の定めについて>

★ B社における社員就業規則には以下のような定めがある。

第36条(休職)
社員が次の各号の1つに該当するときは休職を命ずる。
(1)業務外の傷病による勤務不能のための欠勤が引き続き1ヵ月を超えたとき
(5)その他前各号に準ずる等特別の事情があり、休職させることが適当と会社が認めたとき
 前項第1号により休職する場合には、医師の診断書を提出しなければならない。なお、医師について会社が指定することがある。
 第1項第5号の適用に当たり、会社は指定する医師の診断を受けさせることがある。この場合社員は、合理的な理由なくこれを拒んではならない。

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