#260 「京都電子工業事件」東京地裁
2010年5月26日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第260号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【京都電子工業(以下、K社)事件・東京地裁判決】(2009年8月31日)
▽ <主な争点>
勤務態度不良等を理由とする管理職から一般社員への降格処分等
1.事件の概要は?
本件は、降格処分は違法かつ無効であると主張するXが雇用契約に基づく同処分前の地位の確認および同処分前の額の賃金等(約103万円)の支払い、ならびに不法行為に基づく慰謝料等(一時金減額の損害88万円、慰謝料100万円)の各支払いをK社に対し、求めたもの。
なお、K社は就業規則において、業務上の怠慢または監督不行届によって災害その他の事故を発生させたとき、あるいは勤務態度、勤務成績が悪く改善が見られないときは、懲戒処分として降格させることができ、降格にともない現役職を解任し、下位役職に就けること(降職)がある旨定めている。
2.前提事実および事件の経過は?
<K社、Xおよび本件組合について>
★ K社は、分析機器、計測機器、医用機器の製造ならびに販売等を業とする会社である。
★ X(昭和28年生まれの男性)は、環境用分析計のメンテナンス業務に従事していた経験を買われ、昭和62年10月、K社に従業員として雇用され(以下「本件雇用契約」という)、同社の東京営業所において勤務している。平成18年10月当時、53歳であり、妻、長女および長男がいる。
★ JAM・K社労働組合(以下「本件組合」という)は、Xを執行委員長として、平成17年9月に結成された労働組合である。
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<本件降格処分および処分理由等について>
▼ Xは平成元年1月に主任(5等級42号)、3年1月に係長(6等級24号)、8年4月に課長代理(7等級57号)にそれぞれ昇格、昇職、昇給した。
▼ その後、Xは昇格、昇職はなかったものの、15年4月までに断続的に7等級72号へ昇給し、16年4月に7等級71号に降給となったものの、17年4月には7等級73号に昇給した。
▼ Xは17年1月、K社の優良社員賞、同年5月に社団法人日本分析機器工業会の優良従業員授賞の各表彰を受けた。
▼ Xは18年4月、K社の品質保証本部カスタマーサポート部東日本CS課課長付(課長代理)に就き、本件雇用契約に基づく賃金として、合計43万3500円の支給を受けていた。なお、職務等級・号は7等級74号であった。
▼ K社はXに対し、同年10月、就業規則153条1号(職務上の怠慢)および同条4号(勤務態度、勤務成績の不改善)に該当することを理由として、同規則150条4号により、副主事(7等級74号)より社員4級(4等級150号)に降格させるとともに、課長付より一般社員に降職させ、これに伴い降給(賃金合計36万8500円)することを内容とする懲戒処分(以下「本件降格処分」という)を行った。
▼ K社は本件降格処分の撤回を求めた本件組合の上部団体に対し、同年11月、理由説明書を提出した。同書面には本件降格処分の理由およびK社の意見として、概ね以下のように記載されている。
★ 処分理由
Xが青森県原子力センターにおける製品不具合に対して行った処置について、以下の問題点(職務上の怠慢)がある。
(1)製品の基本性能に係わる問題を解決するに当たり、事前に当社の技術部門に調査内容、収集するデータの種類、取るべき対処方法などを相談し、指示を受けて行動すべきであるが、自らの勝手な判断で行動した。
(2)AC電源を誤って接続し問題を大きくした上、その後の処置も技術部門に相談せず、テフロンチューブからポリエチレンチューブへの取替えを外注業者に指示した。
(3)ポリエチレンチューブはフッ素を含んでいないため、フッ素ガスの発生はないが、仕様書に記載している結露対策としてチューブを加湿した場合、耐熱温度が低いため熔融し、最悪の場合火災などの問題が発生する恐れがあることを考慮せず、問題解決の糸口を発見したように主張し、反省の色が見受けられない。
(4)当該製品でテフロンチューブを使用してきた過去の実績を無視して、勝手に仕様を変更することは、CS課の副主事であっても認められない。
★ K社意見
Xは以前から勤務態度が悪く(客先訪問時の遅刻、客先備え付け品の無断使用、禁煙場所での喫煙など)、再三条市より口頭注意を受けただけでなく、17年8月の仙台環境局施設部松森工場での作業ミス以降も業務に対する姿勢、態度に真摯な反省の様子が見られず(勤務態度、勤務成績の不改善)、これらのことから一部プラントメーカーより、複数の客先への「出入り禁止」が通告されている。このことから、本件降格処分は妥当なものと考える。
▼ 本件組合はK社に対し、19年12月、本件降格処分についての団体交渉の申入れをした。その後、同社と同組合は、20年1月、本件降格処分に関する団体交渉を行った。
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<K社における職制、降格等の定めについて>
★ K社は就業規則において、管理職の範囲を上位から順に、本部長、部長、課長代理、係長、主任と定めている。
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