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#143 「K工業技術専門学校(私用メール)事件」福岡地裁久留米支部(再掲)

2006年7月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第143号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【K工業技術専門学校(私用メール)事件・福岡地裁久留米支部判決】(2004年12月17日)

▽ <主な争点>
私用メールによる出会い系サイト投稿等を理由とする懲戒解雇の効力

1.事件の概要は?

本件は、K工業技術専門学校(以下、K校)の教員Xが同校から貸与された業務用パソコンを使用してインターネット上の出会い系サイト等に投稿し、他数回メールを送受信したことを理由に行われた懲戒解雇の無効を主張して、雇用契約上の地位の確認と未払賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびK校におけるパソコンの使用状況等について>

★ XはK校で教員として26年間勤務してきた者であり、本件当時は教師として授業を担当するとともに、進路指導課長として学生の就職関係の事務にも携わっていた。なお、進路指導課長は学生課長や教務課長等と並んで校長に次ぐ役職であった。

★ K校では全職員にパソコンが貸与されていたが、その使用方法および遵守事項等について特に説明や教示は行われず、現在まで使用規程も定められていない。

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<私用メールによる出会い系サイト投稿等について>

▼ Xは12年12月頃から貸与されたパソコンおよびメールアドレスを使って、学外の交際相手の女性との間で私用メールを交わし、13年4月頃からはいわゆる出会い系サイトで知り合った複数の女性と私用メールを交換したり、同メールアドレスを使用して出会い系サイトに登録したりするようになった。

▼ Xはメールの相手から「勤務先名を出して大丈夫か」などの指摘を受けたことがあったが、15年8月に投稿した掲示板でメールアドレスを閲覧可能にしていたため、その掲示板を見た「通行人」と称する人物からK校に匿名で指摘があり、Xの行為が発覚した。

▼ K校がメールサーバーの調査を進めたところ、Xが送受信した多数の私用メールがあり、特定の女性と毎日のようにメールのやりとりをしていたことが判明した。

★ 10年9月から15年9月までのXのメールにつき、その受信記録約1650通のうち約6割が上記のような私用メールであり、それらの約半数程度が昼休みを除く勤務時間内に行われていた。

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<本件懲戒解雇等について>

▼ 15年9月、K校の校長と事務局長がXと面談を行って自主退職を勧めたが、Xが拒否したため、勤務時間内に出会い系サイトにK校のメールアドレスでアクセスした行為が同校の名誉信用を傷つけるものである等として、Xに対して処分が決まるまで当分の間出勤停止処分とすることとした(以下「本件出勤停止」という)。

▼ K校は理事長の諮問機関である懲戒委員会を2回にわたって開催したところ、同委員会において、全会一致でXについて懲戒解雇相当とされ、理事長はXを懲戒解雇とする旨決定することとした(以下「本件懲戒解雇」という)。

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