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#596 「地方公務員災害補償基金愛知県支部長事件」名古屋地裁(再掲)
2023年9月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第596号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【地方公務員災害補償基金(以下、C基金)愛知県支部長事件・名古屋地裁判決】(2021年4月19日)
▽ <主な争点>
長時間労働等による大きな心理的負荷と公務起因性など
1.事件の概要は?
本件は、甲市職員であるXが、2007年4月1日に乙病院への異動後の量的・質的に過重な公務によって同年5月頃までに精神障害を発病し、双極I型障害(双極性感情障害)に罹患したと主張して、C基金愛知県支部長(以下「処分行政庁」という)に対して地方公務員災害補償法に基づき公務災害認定を請求したが、処分行政庁から公務外認定処分を受けたことから、C基金に対し、その取消しを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<X、乙病院について>
★ X(1968年生)は、1991年4月、愛知県甲市職員として採用され、商工部、保健環境部等で勤務した後、2002年4月から上下水道局に出向し、2007年4月、乙病院事務局管理課に配置換えとなった者である。
★ 乙病院には、2007年4月当時、約200名の医師および約700名の看護局職員を含む合計約1200名が勤務しており、管理課はこれらの職員の人事、給与および福利厚生全般を担当していた。
★ Xは乙病院に配置換えとなり、職員の出張、手当等の支給、休暇に関する内部事務を担当することになったが、それまで庶務・管理的な内部事務の経験はなく、庶務研修を受け、あるいは庶務管理システムを操作したことはなかった。
<Xが双極I型障害と診断されるに至った経緯、訴訟の提起等について>
▼ 2007年4月11日、甲労働基準監督署は乙病院に対し、医師に係る賃金台帳について、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜労働時間数を労働者各人別に記入していないとして是正勧告を行った。
▼ 同月25日、Xは不眠を訴えてA病院を初めて受診し、不眠や神経症の薬品の処方を受けた。
▼ 2008年2月、Xは再び不眠等を訴えてB病院を受診し、主治医によりうつ病と診断された。
▼ Xは同年4月、財産部資産税課に異動し、治療を継続したが、同年10月から療養休暇を取得し、2009年3月、休職を開始し、同年8月9日から9月7日まで、躁病エピソードの発症によりD病院に医療保護入院となり、同日から11月14日まで、E病院に任意入院となった。そして、2010年2月、双極I型障害と診断されるに至った。
▼ Xは2015年3月、2007年5月20日頃に公務により精神障害を発病したと主張して、処分行政庁に公務災害認定を請求した。これに対し、公務と精神障害の発病との間に相当因果関係が認められないとして、公務外の災害と認定する処分がなされ、その処分を不服とする審査請求も棄却されたため、2018年4月、同処分の取消しを求める訴訟を提起した。
<精神疾患等の公務災害の認定について>
★ 地方公務員災害補償法24条以下は、職員が公務上疾病にかかった場合の補償について定め、地方公務員災害補償法施行規則(以下「規則」という)1条の2および別表第1の9号は、公務に起因する「人の生命にかかわる事故への遭遇その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したため生じた精神及び行動の障害並びにこれに付随する疾病」をその補償の範囲としているところ、精神障害の発病が公務災害に該当するか否かの判断は、専門家の検討を踏まえてC基金が作成した別紙「精神疾患等の公務災害の認定について」(平成24年3月16日地基補第61号。以下「認定基準」という)によって行われている。
※「精神疾患等の公務災害の認定について」
https://www.chikousai.go.jp/reiki/pdf/h24ho61.pdf
★ 「認定基準」は、対象疾病を発症していることを前提として、(1)対象疾病の発症前おおむね6ヵ月の間に、業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたことが認められること、(2)業務以外の負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないことを認定要件としており、(1)の要件に関連して、規則1条の2および別表第1の9号にいう「その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象」に該当する事象があったものと判断できる場合として、たとえば、下記(ア)ないし(ウ)のような場合を掲げている。
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