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#298 「海上自衛隊(たちかぜ)事件」横浜地裁(再掲)

2011年11月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第298号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【海上自衛隊(たちかぜ)事件・横浜地裁判決】(2011年1月26日)

▽ <主な争点>
パワハラなどと自殺との相当因果関係の有無等

1.事件の概要は?

本件は、海上自衛隊員として護衛艦に配属され、自殺をしたXの相続人Yらが自殺の原因は先輩隊員であったAの暴行、恐喝であったと主張して、Aに対しては民法709条(不法行為による損害賠償)に基づき、国に対しては国家賠償法1条1項* または同法2条1項** に基づき、それぞれ逸失利益および慰謝料等(計約1億3千万円)を求めたもの。

国家賠償法(以下「国賠法」という)
* 1条1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

** 2条1項 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

2.前提事実および事件の経過は?

<国、X、Y、ZおよびA等について>

★ 国は、内閣総理大臣の下、全国に海上自衛隊の組織として各地方隊、自衛艦隊等を編成しており、神奈川県横須賀市において自衛艦隊司令部、地方総監部(横須賀地方隊)等を配置している。「たちかぜ」は護衛艦隊に所属し、横須賀を定係港としていた。

★ Xは、平成15年8月、2等海士に任官し、海上自衛隊横須賀教育隊に入隊した後、同年12月、「たちかぜ」に乗組を命じられ、船務科電測員として勤務し、分隊の編成上は第2分隊第22班に所属していた者である。

★ YはXの親であり、ZはXの姉である。

★ Aは、平成元年に海上自衛隊に入隊し、平成9年から「たちかぜ」に乗組を命ぜられ、17年1月頃まで「たちかぜ」船務科電測員として同艦に乗り組んでいた。Aの階級は15年1月以降、2等海曹であった。なお、Aは17年1月、横浜地方裁判所横須賀支部において、「たちかぜ」の乗組員3名に対する暴行・恐喝被告事件の被告人として懲役2年6月(執行猶予4年)の有罪判決の言い渡しを受けており、同月、上記の暴行・恐喝等を理由として、懲戒免職処分を受けた。

★ 本件当時の「たちかぜ」の艦長は1等海佐のBであり、Xが所属していた第2分隊の分隊長は1等海尉のCであった。また、分隊長を補佐する先任海曹はDであり、Xが所属していた第22班の班長はEであった。

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<本件自殺および本件ノート等について>

▼ Xは16年6月、1等海士に昇進したが、同年10月、京浜急行線立会川駅(東京都品川区)構内において、電車に飛び込み轢死した(以下「本件自殺」という)。

★ Xは本件自殺時にノート(以下「本件ノート」という)を所持していたが、本件ノートには自殺を決意するに当たっての心情等がXにより手書きで記載されており、いわゆる遺書と考えられるものである。

★ 本件ノートは、最初の頁に本件自殺を決意した旨の記載があり、当該頁と次頁に両親、姉および祖父への感謝の気持ちが述べられている。その次の頁には、Aを名指しし、「お前だけは絶対に許せねえからな。必ず呪い殺してヤル。悪徳商法みてーなことやって楽しいのか?そんな汚れた金なんてただの紙クズだ。」等との記載がある。

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