#83 「九州運送事件」大分地裁(再掲)
2005年4月13日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第83号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【九州運送(以下、K社)事件・大分地裁判決】(2001年10月1日)
▽ <主な争点>
労働基準法の改正に伴う労働時間の短縮による賃金減額
1.事件の概要は?
本件は、K社の従業員であるAらが、同社が労働基準法(以下「労基法」)の改正に伴い、所定労働時間を週40時間とする旨就業規則を変更した際、Aら従業員の同意なく、基本給をそれまでの280分の260に減額する旨賃金規程を変更したことが無効であるとして、従前の賃金との差額の支払い等を請求し、併せて、Aらの基本給が従来の賃金規程による金額であることの確認を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<K社およびAらについて>
★ K社は社員約300人を雇用し、貨物自動車運送事業等を営んでいる会社である。
★ Aら計180名は平成11年3月当時、K社に雇用されていた従業員であり、その多くが大型トラック運転手として稼動していた。また、AらはK社労働組合(以下「組合」という)の組合員であった。
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<本件賃金規程の改定等について>
▼ K社は労基法の改正によって、1週間の所定労働時間が40時間と定められたことに伴い、1週間の所定労働時間を40時間と短縮する旨就業規則を改定し、これを平成11年3月16日から実施した。この就業規則変更により、K社の従業員の年間所定労働日数は280日(10年度)から260日(11年度)に減少した。
▼ K社は賃金体系が整備されるまでの期間、従業員の基本給を全員一律にそれまでの280分の260に減額して、賃金等の計算を行うものとする旨賃金規程の改定(以下「本件賃金規程の改定」という)を行い、11年3月16日から実施した。
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<労働協約の定め等について>
★ K社と組合との間で締結されている労働協約には、以下のような旨の定めがある。
(a)平成2年4月付「覚書」には、「基本給の一部である勤続給について、勤続年数に応じて400円ずつ上昇させる」旨定められている。
(b)5年4月の協定には「すべての従業員の賃金を月給制とする。ただし、月ごとの出勤日数が所定労働日数の80%未満の場合は欠勤控除する」と定められている。
(c)9年4月付「協定書」には「9年4月以降の賃金を1人5,000円(うち基本給2,000円)増額する」旨定められている。
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