#459 「ケー・アイ・エス事件」東京地裁(再掲)
2018年4月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第459号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ケー・アイ・エス(以下、K社)事件・東京地裁判決】(2016年6月15日)
▽ <主な争点>
休職期間経過後の退職扱いと労働基準法19条違反など
1.事件の概要は?
本件は、K社の従業員であったXが腰痛を発症し、これを悪化させて就労不能な状態となって休職していたところ、所定の休職期間が経過した後に同社が退職扱いにしたことから、上記腰痛は会社において重量物を持ち上げる作業が原因で発症したものであり、K社の措置は労働基準法19条(解雇制限)に違反し無効であるとして、同社に対し、雇用契約上の地位の確認を求めるとともにXが腰痛を発症・悪化させたのはK社に腰痛予防のための必要な措置を講じなかった安全配慮義務違反・過失があったことによるものであるとして、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償として、休職後の給与および賞与相当額、ならびに、平成26年1月以降に支払われるべき給与相当額等の支払を求め、休職後の給与および賞与相当額等については予備的に民法536条(債務者の危険負担等)2項に基づき賃金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<K社およびXについて>
★ K社は、業務用スパイスの製造販売等を業とする会社であり、千葉県八千代市に工場を有している。
★ X(昭和49年生)は、平成13年10月にK社との間で期限の定めのない雇用契約を締結して、八千代工場で微生物検査や書類作成等の業務に従事しており、20年以降は品質管理部門の主任の地位にあった者である。
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<Xの退職扱いに至るまでの経緯、労災認定等について>
▼ Xは19年11月頃から1日2時間程度、スパイス原料の殺菌工程を手伝うようになり、20年1月頃からは昼休みの交代要員として1時間程度同工程を手伝っていたが、原料の入ったコンテナ容器を傾けて殺菌機に投入する作業(以下「本件作業」という)を行う頻度は1時間の間に1、2回程度であった。
▼ Xは20年7月、本件作業中に腰を痛め、昼休みの交代要員をしばらく休ませてほしいと申し出た。その後、Xは交代要員に復帰したが、本件作業中に再度腰を痛めた。
▼ Xは23年1月21日から腰痛が悪化し就労が困難であるとして休職した。K社は24年1月20日に休職期間が1年を経過したことを理由にXを退職扱いとした。
★ なお、K社の就業規則上、その時点までのXの勤続年数に対応した休職期間は半年までと定められていたが、同社ではXの求めに応じて休職期間を半年延長することを認め、退職時期は休職開始から1年後となった。
▼ Xは24年5月、整形外科の医師から変形性腰椎症により外来通院中であり、その時点において腰痛が強いため就労は不可能である旨診断された。
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