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#95 「須賀工業事件」東京地裁

2005年7月13日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第95号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【須賀工業(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2000年2月14日)

▽ <主な争点>
賞与の支給日在籍要件(当初の支給予定日後に退職した従業員への不支給)等

1.事件の概要は?

本件は、S社の賃金規則に賞与の「支給日在籍要件」があるところで、規則等に定める賞与支給予定日には在籍していたが、S社と労働組合との間の団体交渉が難航したことから、実際に賞与が支給された日には退職していたXら6名がS社に対して、賞与の支払い等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXらについて>

★ S社は、空気調和、給排水衛生設備の設計施工などを業とする会社である。

★ Xら6名はS社の従業員であったが、それぞれ10年6月30日から同年8月31日までの間に同社を退社した。

★ S社には、労働組合(以下「組合」という)があり、Xら6名はいずれも組合の組合員であった。

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<本件賞与について、妥結・支給されるまでの経緯>

▼ S社と組合は、9年度下期賞与(以下「本件賞与」という)等について、10年4月から同年9月まで7回にわたり、団体交渉(以下「団交」という)を重ねた。

▼ S社と組合は本件賞与の支給日を10年9月30日とすることを合意し、S社は同日、従業員に対し、本件賞与を支払ったが、Xらに対しては本件賞与の支給日に在籍していないという理由で本件賞与を支払わなかった。

★ 本件賞与の支給の基礎となる勤続期間は、9年10月から10年3月までの6ヵ月間であり、Xらはいずれも上記期間に継続して勤務した。

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<本件賃金規則および本件内規等について>

★ S社の賃金規則(以下「本件賃金規則」という)には、「賞与の支給時期は、原則として毎年6月および12月の2回とし、別段の定めのある者を除き、支給時点の在籍者に対し支給する」との定めがある。なお、S社において、本件賃金規則は事務部長が保管し、従業員に対しては配布していなかった。

★ S社の賞与支給内規(以下「本件内規」という)には、次のような定めがある。

第2条(支給時期)
(1)従業員賞与の支給時期は原則として、次のとおりとする。
     上期賞与12月10日  下期賞与6月10日
(2)前項によりがたい場合は、労使協議のうえ決定する。

第4条(支給対象者)
 従業員賞与は原則として、支給日在籍者に対し支給する。
 ただし、退職者の扱いは、次のとおりとする。
(a)定年退職者・・・退職時までの月割計算により支給する。
(b)中途退職者・・・結婚を理由とする者についてのみ、5月末日付退職者は下期賞与の、また11月末日付退職者は上期賞与の対象者とする。

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