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#473 「P社事件」横浜地裁(再掲)

2018年10月31日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第473号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【P社事件・横浜地裁判決】(2017年3月30日)

▽ <主な争点>
退職者に対する損害賠償請求、不当訴訟など

1.事件の概要は?

本件は、P社に勤務していたXが躁うつ病という虚偽の事実をねつ造して退職し、就業規則に違反して業務の引き継ぎをしなかったことが不法行為に当たるなどと主張して、同社がXに対し、民法709条(不法行為による損害賠償)に基づき、1270万円余の損害賠償等の支払を求めたもの(本訴)。

反訴は、XがP社ないし同社代表者によるXに対する退職妨害、本訴の提起および準備書面による人格攻撃が不法行為ないし違法な職務執行に当たるなどと主張して、P社に対し、民法709条または会社法350条(代表者の行為についての損害賠償責任)に基づき、330万円の損害賠償等の支払を求めた事案である。

2.前提事実および事件の経過は?

<P社、AおよびXについて>

★ P社は、コンピュータのソフト・ハードウェアの設計・製造・販売等を目的とする会社である。

★ Aは、P社が平成15年2月に設立されてから現在に至るまで、その代表取締役の地位にある者である。

★ Xは、平成26年4月、P社にシステムエンジニアとして入社した者である。

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<Xの退職、本訴提起に至った経緯等について>

▼ Xは26年12月21日頃、上司である部長と面談し、27年1月末日付で退職したい旨を話すなどした。その後、Xは12月22日の午前中、24日および25日、業務を欠勤した。

▼ Xは27年1月7日、クリニックを受診し、不安抑うつ状態と診断され、翌8日、P社に対し、26年12月25日付の退職届を郵送した。

▼ Xは遅くとも27年1月末には社員寮から転居し、同年2月1日から転職先での業務を開始した。

▼ P社は同年3月、「Xが退職の理由として主張したうつ病は転職をするための虚偽の事実であったことが判明したところ、Xらの行為はP社を欺罔して損害を与える不法行為であること、謝罪も損害額の支払もない場合は法的措置に移行することもある」などと記載した代理人名義の内容証明郵便をXに対して差し出した。

▼ P社は同年5月、Xに対して1270万5144円の支払を求める本訴を提起した。

▼ Xは同年6月、病院を受診したところ、「ストレス障害であり、入院加療を含めて3ヵ月間の療養を要し、就業困難である」との診断を受けた。

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<P社の就業規則上の定めについて>

★ P社の就業規則には従業員の退職に関し、以下のような定めがある。

第50条(自己退職の手続き)
 自己の都合により退職しようとする時は、少なくとも90日前までに退職願を所属最高責任者に提出し、許可を得て総務部に届け出るものとする。
 前項の規定により退職願を提出した者は、会社の承認があるまで従前の業務に服さなければならない。
 略

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