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#315 「ユウシュウライフ・白石産業事件」東京地裁

2012年7月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第315号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ユウシュウライフ(以下、Y社)、白石産業(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2011年1月19日)

▽ <主な争点>
業務委託先従業員からの嫌がらせ、解雇の効力など

1.事件の概要は?

本件は、XがY社に対し、その業務委託先であるH社の従業員から嫌がらせを受けたなどとして、不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料)の支払いを求めるとともに、Xの使用者であったS社に対し、不当に解雇されたなどとして不法行為に基づく損害賠償金(逸失利益および慰謝料)の支払いを求めたもの。

なお、有料老人ホームを経営していたY社は当該施設の事務管理業務等をH社に委託し、H社からS社が警備および施設管理業務の一部につき再委託され、Xは同施設で稼働していた。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社、S社およびXについて>

★ Y社は、有料老人ホームの経営等を目的とする会社であり、本件当時、有料老人ホーム「カルムコート武蔵野」(以下「本件施設」という)を経営し、本件施設の事務管理業務、施設管理業務等をH社に委託していた。本件当時、H社の従業員の中には本件施設の支配人であるAのほか、ケアスタッフや事務職などがいた。

★ S社は、不動産の管理および建物の清掃等を目的とする会社であり、H社から本件施設の警備および施設管理業務の一部につき、再委託されていた。

★ Xは、S社との間で雇用契約を締結し、本件施設において稼働していた者である。

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<Xの本採用拒否に至った経緯等について>

▼ S社はXに対し、「雇用期間:平成21年9月7日~22年9月6日、勤務場所:本件施設、仕事の内容:警備員(常駐警備)」等とする嘱託労働契約書を交付し、Xはこれに署名押印をした。

▼ 本件施設関係者複数名からS社に対し、Xの入居者に対する言葉遣い、態度が悪く、本件施設内で不信の声が強くなっていたことを受け、同社は21年10月7日、Xに対し、これらを改めるよう指導し、Xは努力する旨述べた。

▼ 本件施設では気配りが必要であるにもかかわらず、Xは協調性がなく、入居者とのコミュニケーションに問題があることから、同施設における勤務を継続することは困難であると判断したS社は同月23日、Xに対し、就業場所の変更を告げ、後日、新たな就業先としてUBG東池袋ビル(以下「本件ビル」という)を提示したが、Xはこれを拒否した。Xは同日以降、S社における業務に従事していない。

▼ Xは同年11月、東京紛争調整委員会に対し、あっせん申請をした。

▼ S社は同年12月、Xに対し、「あなたは無断欠勤・時間を守らない・協調性がない・あっせん申請書に虚偽の申告がある。よって、同月3日付をもって本採用にできません」等と記載した通知書を送付した。なお、同社はXに対し、30日分の平均賃金を支払った。

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<S社の嘱託就業規則について>

★ S社の嘱託就業規則には、以下のような規定がある。

(契約期間中途の更新)
第7条
 嘱託契約期間の中途であっても、委嘱する職務、給与、労働条件等の内容について、変更する必要を生じた場合は、嘱託者の同意を得た上で嘱託契約を変更することがある。

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