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#307 「国立大学法人 T大学事件」東京地裁

2012年3月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第307号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【国立大学法人 T大学事件・東京地裁判決】(2011年4月28日)

▽ <主な争点>
退職手当規則に規定される「配偶者」に該当するか等

1.事件の概要は?

本件は、T大学の教授Xの遺族(配偶者)であると主張するYが、同大学に対し、Xの死亡による退職に伴う退職手当の支払いを求めたもの。

T大学の退職手当規則では「この規則による退職手当は、職員が退職し、または解雇された場合に、その者(死亡による退職の場合には、その遺族)に支給する」「…遺族は次の各号に掲げる者とする。(1)配偶者(婚姻の届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)」等と規定されており、Yは死亡(平成21年11月4日)したXと事実上の婚姻関係にあったというべきであるから「配偶者」にあたると主張した。

2.前提事実および事件の経過は?

<T大学、XおよびY等について>

★ T大学は、国立大学法人である。

★ Xは、平成21年11月4日の時点において、T大学美術学部教授の地位にあった者であるが、同日、死亡した。

★ Yは、Xとの間で婚姻の届出をしていない。

★ Zは、Xの父である。

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<T大学の就業規則および退職手当規則の定めについて>

★ T大学の職員就業規則19条は「職員は次の各号の一に該当するときは退職とし、職員としての身分を失う。(1)ないし(4)いずれも略 (5)死亡したとき」と規定し、53条は「職員の退職手当について必要な事項は別に定める『T大学職員退職手当規則』による。」と規定している。

★ T大学職員退職手当規則2条1項は「この規則による退職手当は、職員(常時勤務するものにかぎる。以下同じ。)が退職し、または解雇された場合に、その者(死亡による退職の場合には、その遺族)に支給する。」と規定している。

★ 上記規則13条1項は「第2条に規定する遺族は、次の各号に掲げる者とする。
(1)配偶者(婚姻の届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)
(2)子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた者
(3)
(4)子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹で第2号に該当しないもの」と規定している。

★ 同規則13条2項は「前項に掲げる者が退職手当を受ける順位は、前項各号の順位により、第2号および第4号に掲げる者のうちにあっては、同号に掲げる順位による。」と規定し、同条3項は「退職手当の支給を受けるべき同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分して支給する。」と規定している。

★ 同規則16条4項は「この規則の規定による退職手当は、職員が退職した日から起算して1月以内に支払わなければならない。ただし、死亡により退職した者に対する退職手当の支給を受けるべき者を確認することができない場合その他特別の事情がある場合はこのかぎりではない。」と規定している。

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<Xの死亡による退職手当額、Yの支払請求について>

★ Xの死亡による退職に係るT大学退職手当規則に基づく所定の退職手当の額は、1853万6260円である。

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