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#338 「新宿区事件」東京地裁(再掲)

2013年6月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第338号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【新宿区(以下、S区)事件・東京地裁判決】(2011年9月29日)

▽ <主な争点>
退職願が真正に成立したか否かなど

1.事件の概要は?

本件は、S区の職員であったXが平成6年6月7日付のX名義の退職願は後から何者かが「退職願」の文言を書き込んでものであって、Xが退職する意思で作成したものではない、またはXが意思能力を喪失した状態で作成した無効なものであると主張して、S区に対し、同区の職員の地位にあることの確認を求めるとともに上記退職願に基づきXが退職したとされる同年7月19日以降の給与等(合計約1億6千万円)の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S区およびXについて>

★ S区は、東京都の特別区のひとつである。

★ Xは、平成元年4月、用務職員としてS区に採用され、同区内の保育園において清掃、洗濯等の業務に従事していた者である。

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<本件退職に至った経緯等について>

▼ 平成6年4月、Xは勤務先の洗濯場でおしぼりを洗っていた際、モップが左足踵に当たり、1週間の安静加療を要する打撲の傷害を負った。

▼ 同年5月、Xは病気休暇をとるとともに、上記傷害について公務災害認定を請求し、同認定を受けた。

▼ 同年6月、XはS区の総務部職員課職員と同区役所にて面談した。

★ 表題部分に「退職願」、その下に「S区長 ○○殿」という印刷文字による記載があり、本文部分に「私は、一身上の都合のため、平成6年7月19日付をもって、退職いたしたくお願いいたします。」(一身上の都合、および日付部分は手書き、その余は印刷文字)という記載があり、その下に「平成6年6月7日」、「所属 福祉部児童課N保育園、職層名 主事」という記載および氏名欄のXの署名押印がされている文書(以下「本件退職願」という)が存在する。

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