#489 「東日本旅客鉄道事件」東京地裁(再々掲)
2019年6月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第489号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【東日本旅客鉄道(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2018年3月16日)
▽ <主な争点>
定年退職年度に夏季手当が支給されない取扱いが不合理な差別的取扱いとなるか等
1.事件の概要は?
本件は、平成29年4月末日付でH社を定年退職したAら3名が、同社の賃金規程等において4月に定年退職する者のみ退職年度の夏季手当が支給されない取扱いであること、およびこの扱いを是正しない不作為について、合理性のない差別的取扱いであって公序良俗に反して違法である主張して、H社に対し夏季手当相当額の損害賠償等の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<H社およびXについて>
★ H社は、旅客鉄道事業、貨物鉄道事業などを主な目的とする会社である。
★ A・B・Cの3名(いずれも誕生月は4月)は、H社に雇用されていた労働者であり、平成29年4月末日付で同社を定年退職した者である。Aらはいずれも労働組合に所属している。
--------------------------------------------------------------------------
<H社の就業規則・賃金規程等の定め、本件仕組み、本件取扱いについて>
★ H社における定年に関する就業規則の定めは以下のとおりとなっている。
・社員の定年は満60歳とする。
・定年退職日は、社員が定年に達する日の属する月の末日とする。
★ H社における期末手当に関する就業規則、賃金規程の定めは以下のとおりとなっている。
・期末手当は、6月1日(夏季手当)および11月1日(年末手当)にそれぞれ在職する社員および基準日前1ヵ月以内に退職し又は死亡した社員に対して支給する(以下「本件基準日要件」という)。
・調査期間は、夏季手当については前年10月1日から3月31日まで、年末手当については4月1日から9月30日までとする。
・期末手当の支給額は基準額、期間率、成績率によって算出し、基準額は調査期間内の欠勤期間に係る減額割合によって算出し、また、成績率は調査期間内の勤務成績に応じて決定する。
・原則として、夏季手当は7月に、年末手当は12月に支給する。
★ 以上の賃金規程の各定めにより、4月に定年退職する労働者は、本件基準日要件である6月1日の前1ヵ月以内に退職する社員に該当しなくなるため、同手当が支給されないこととなる(以下「本件仕組み」という)。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?