#号外 「堺労働基準監督署長事件」大阪高裁
2003年9月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」号外で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 用語の解説
「トラック持ち込み」あるいは「一台持ち」運転手とは、自分でトラックを所有し、それを特定の会社に持ち込んで、経費等を負担しながら、専属的に運送等の業務を行う運転手のことである。
──────────────────────────────────────
■【堺労働基準監督署長(以下、S労基署長)事件・大阪地裁判決】(2002年3月1日)
▽ <主な争点>
トラック持ち込み運転手の「労働者」性
1.事件の概要は?
本件は、いわゆるトラック持ち込みというカタチでコスモ商会(以下、C社)のトラック輸送業務に従事していたXがトラックの荷台から転落し、頭部外傷II型等の傷害を受けた。Xは「傷害は業務上の事由によるものである」として、S労基署長に対し、療養補償給付・休業補償給付を請求したが、同労基署長は不支給決定したため、その取り消しを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<XがC社において従事することになった経緯について>
▼ Xは、かつて運転手を雇い、事業者として運送業を営んでいたが、経営が悪化し廃業に至った。そして運送業務の下請けで生計を立てようと考え、安価な中古トラックを取得しようとしたところ、知人からC社を紹介された。
▼ C社のY社長は手頃な中古トラックがなかったので、Xからの依頼を断ったが、Xが経済的窮状を訴えたため、専属の「持ち込み」の運転手として働かないかと提案し、Xは同社で運送業務に従事することになった。
<Xの傷害、S労基署長による本件処分等について>
▼ 平成7年12月、Xは大阪市・M社構内においてC社の業務に従事していた際にトラックの荷台から転落し、頭部外傷II型、後頭部挫創、腰部打撲の傷害(以下「本件傷害」という)を受けた。
▼ 上記事故後、XはK外科に搬送され、治療を受けた。8年1月、Xは羽曳野労働基準監督署長(以下、H労基署長)に対し、本件傷害は業務上の事由によるものであるとして、労災保険法に基づき療養補償給付を請求し、同労基署長は支給する旨の決定をした。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?