#468 「T社事件」東京地裁(再々掲)
2018年8月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第468号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【T社事件・東京地裁判決】(2015年9月9日)
▽ <主な争点>
男女関係を巡る出勤停止の懲戒処分、配転命令の効力など
1.事件の概要は?
本件は、使用者であるT社から元交際相手の男性との復縁工作を探偵社に依頼した行為に関し3日間の出勤停止の懲戒処分を受け、その後、配転命令を受けたXが同社に対し、上記懲戒処分および配転命令は無効かつ違法であると主張して、(1)出勤停止ないし休職期間中の賃金7万円余の支払、(2)配転先の部署において勤務する雇用契約上の義務のないことの確認、(3)違法な懲戒処分および配転命令により受けた精神的苦痛について不法行為に基づく損害賠償請求として200万円余の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<T社およびXについて>
★ T社は、電気機器製造、発電システム開発等を業とする会社である。
★ Xは、平成20年4月にT社に雇用され、電力システム社、原子力事業部、磯子エンジニアリングセンター(IEC)の原子力システム設計部グループの業務に従事していた者である。
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<本件処分、本件配転に至った経緯等について>
▼ Xは男性を女性に近づけ、別れを演出する等の復縁工作を行う探偵社であることを知りながら、当該探偵社に対し、130万円を支払って、Xの元交際相手の男性(以下「本件男性」という)の身辺調査および復縁工作を依頼した(以下「本件依頼行為」という)。
▼ 当該探偵社は本件依頼行為を遂行するため、事実無根の文章をインターネットの掲示板等に適示する等の名誉毀損行為、本件男性の結婚相手(以下「本件被害女性」という)の結婚式・披露宴の直前にその会場に対し、開催すると大変なことが起きる等とのメールを送信する脅迫行為、および、T社営業所に対する多数回の架電、メール、ホームページの書き込み等をする業務妨害行為を行った。
▼ Xは平成25年に名誉毀損および脅迫の疑いで逮捕され、広島県警察に逮捕、勾留され、同年12月に広島地方検察庁において不起訴処分となり釈放された。
★ その被疑事実は、Xが探偵社と共謀の上、同年4月、インターネットの掲示板に本件被害女性を中傷する内容の書き込みをして不特定多数人に閲覧させて名誉を傷つけるとともに、本件被害女性を脅す内容の文書をインターネットの掲示板に書き込んで脅迫したというものであった。
▼ Xは同年12月16日からT社横浜事業所への入場禁止を命じられ、同月18日から会社都合の休職を命じられた。
▼ 26年1月10日、T社はXに対し、懲戒として同日から3日間の出勤停止処分(以下「本件処分」という)を行った。
▼ T社はXに対して、同月16日、T社電力システム社傘下の原子力事業部の磯子エンジニアリングセンター原子力システム設計部グループから東京都府中市所在の電力・社会システム技術開発センターの高機能・絶縁材料開発部、環境・機能性材料開発担当への配置転換を命じた(以下「本件配転」という)。
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<T社の就業規則の定めについて>
★ T社の就業規則には「法令、会社諸規則に違反し、かつ、職場内外において他人の人権をみだりに侵したり、性的嫌がらせ(セクシャルハラスメント)をする等の行為をしたとき(103条第2項(3)号)」および「会社の規律に反し、故意又は重大な過失により会社秩序をみだし、又はみだそうとしたとき(同条3項(7)号)」には懲戒解雇に処し、ただし、情状により出勤停止又は減給にとどめることがある(同条1項)旨の定めがある。
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