#461 「甲会事件」東京地裁
2018年5月9日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第461号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【甲会事件・東京地裁判決】(2015年10月2日)
▽ <主な争点>
育児短時間勤務制度の利用を理由とする昇給抑制など
1.事件の概要は?
本件は、甲会で稼働するAら3名が育児短時間勤務制度を利用したことを理由として本来昇給すべき程度の昇給が行われなかったことから、同会に対し、(1)このような昇給抑制は法令および就業規則に違反して無効であるとして、昇給抑制がなければ適用されている号給の労働契約上の地位を有することの確認、(2)労働契約に基づく賃金請求として昇給抑制がなければ支給されるべきであった給与と現に支給された給与の差額等、(3)このような昇給抑制は不法行為に当たり、精神的物質的損害を受けたとして、不法行為に基づく慰謝料等の損害賠償金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<甲会およびAら3名について>
★ 甲会は、東京都から指定管理者として指定を受け、都立乙センターおよびその他の施設を運営している社会福祉法人である。
★ Aは、平成5年5月、甲会との間において期間の定めのない労働契約を締結し、乙センターに理学療法士として入職した者である。
★ Bは、13年4月、甲会との間において期間の定めのない労働契約を締結し、乙センターに看護師として入職した者である。
★ Cは、8年4月、甲会との間において期間の定めのない労働契約を締結し、乙センターに看護師として入職した者である。
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<本件制度、本件昇給抑制等について>
▼ 甲会は育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)を踏まえて、平成22年4月1日から育児短時間勤務制度(以下「本件制度」という)を制定の上、施行した。これを受けて、Aらはそれぞれ本件制度を利用し、現在まで1日6時間勤務を継続している。
★ 甲会の従業員の昇給は乙センター職員給与規程等の定める基準に従い決定され、たとえば、C評価(勤務成績が良好である職員)であれば、昇給号給数は4号給と規定されている。
▼ 甲会は21年度から24年度までの昇給については、全職員につき、たとえば、通常C評価で4号給昇給のところマイナス1号給として3号給昇給としたが、それに加えて、Aらの昇給について、さらにその8分の6を乗じることにより抑制した(以下「本件昇給抑制」という)。
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