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#544 「有限会社スイス事件」東京地裁(再々掲)

2021年8月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第544号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【有限会社スイス(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2019年10月23日)

▽ <主な争点>
能力不足等による解雇、GPS移動記録に基づく労働時間の認定など

1.事件の概要は?

本件は、S社との間で期間の定めのない雇用契約を締結していたXが(1)平成29年11月に普通解雇されたことについて、解雇が無効である旨を主張して、同社に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認や、解雇の後に生ずるバックペイとしての月額給与および遅延損害金の支払を求めるとともに、(2)XとS社はXの基本給を28年12月分から増額することを合意していた旨を主張して、同社に対し、当該合意後の雇用契約に基づき、同月分から29年10月分までの当該合意による増額後の基本給額と実際に支給された基本給額との差額である52万1000円および遅延損害金の支払を求めるほか、(3)S社は労働基準法所定の割増賃金を支払っていないなどと主張して、同社に対し、労働基準法に従った28年10月から29年11月までの割増賃金および遅延損害金や、当該割増賃金に係る労働基準法114条の付加金および遅延損害金の各支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は、洋食喫茶等の飲食店業等を目的とする会社であり、銀座店および築地店の2店舗を経営している。

★ Xは、平成28年10月にS社との間で雇用契約(以下「本件雇用契約」という)を締結し、同年12月まで築地店において店長として勤務後、29年1月からは銀座店においてホール係および調理場担当兼務の従業員として勤務していた者である。

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<本件雇用契約、本件解雇について>

★ 本件雇用契約の主な内容は以下のとおりである。
ア 雇用期間 期間の定めなし
イ 勤務場所 築地店
ウ 休  日 土日、祝日、年末年始
エ 賃  金 基本給30万9000円
なお、29年1月からXの勤務場所が銀座店に、休日が月5日にそれぞれ変更されるとともに、勤務時間が午前9時から午後9時までの間のシフト制(休憩1時間)とされた。

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