#457 「甲社事件」東京地裁
2018年3月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第457号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【甲社事件・東京地裁判決】(2016年8月2日)
▽ <主な争点>
健康診断の際の視力検査に関する安全配慮義務など
1.事件の概要は?
本件は、視覚障害等を有し、平成24年11月、甲社との間で障害者雇用枠での雇用契約を締結し、稼働した後、25年11月に退職したXが同社に対し、(1)従業員から侮辱されたことがパワーハラスメントであり、職場環境配慮義務違反の債務不履行に当たるとして、慰謝料150万円の支払を求め、(2)社内の健康診断の視力検査の際に受傷させたのは安全配慮義務違反に当たるとし、損害賠償として治療費21万円余の支払を求め、(3)Xが休職していたところ、退職(本件退職)の意思表示をしたのは違法な退職勧奨を受けたからであり、本件退職の意思表示は錯誤により無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに未払賃金等の支払を求め、上記(1)ないし(3)が不法行為でもあると主張して、損害賠償として精神的損害の慰謝料150万円等の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<甲社およびXについて>
★ 甲社は、電話サービスに係る手動交換業務の受託業務等を行う会社である。
★ X(昭和51年生の男性)は、平成24年11月、甲社との間で障害者雇用枠での雇用契約を締結した者であり、でんかんおよび左同名半盲(左右とも左半分の視界が欠ける視覚障害)を有している。
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<本件健康診断、本件退職に至る経緯等について>
▼ 25年10月17日、甲社において年1回行われている社内健康診断(以下「本件健康診断」という)が実施された。その検査項目には視力検査があり、両目で覗いて視力を測定する型の視力検査機(以下「本件検査機」という)が使用されていた。
▼ 視力検査を受けた後に目の痛みを訴えたXは本件健康診断の翌日から休職し、「病名:ドライアイ・眼精疲労、診断内容:1ヵ月程度自宅療養が必要」とする病院の診断書を甲社に提出した。
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