#377 「ヒタチ事件」東京地裁(再掲)
2015年1月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第377号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ヒタチ(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2013年3月6日)
▽ <主な争点>
配転命令拒否を理由とする解雇と社宅明渡しなど
1.事件の概要は?
本件は、H社を解雇されたXが解雇は無効であるとして、労働契約上の地位の確認とバックペイの支払いを求め、また、配転打診から始まる同社の一方的な振る舞いは重い持病で苦しむXが安心して主治医のもとで療養を受ける環境を破壊するものであり、これにより精神的損害を被ったとして慰謝料300万円等の支払いを求めたもの(本訴事案)と、H社がXに対し、従業員の社宅として転貸借しているアパート(本件建物)について、解雇によってXが従業員としての地位および転借権を失ったとして、本件建物の明渡しと解雇日以後の賃料相当額の不当利得返還を求めたもの(反訴事案)。
Xは平成16年10月、H社に入社し、甲府営業所に配属され、17年2月、静岡営業所に異動した。22年9月、同社はXに対して、同年11月1日付で静岡営業所から大宮営業所への配転を命じたが(本件配転命令)、Xは本件配転命令を拒否した。
H社は23年4月、Xに同年5月25日までに大宮営業所への配転を再度命じるとともに、これに従わない場合には同月31日付で解雇すると予告したが、Xが従わなかったため、諭旨解雇した。
なお、XはH社が賃貸する本件建物に居住しており、また、11年9月から「うつ状態」として入院治療を受けるなどし、その後も継続的に「うつ状態」「うつ病」として通院治療を受け、17年5月から「反応性うつ病、不眠症」の病名で通院治療を受けている。
2.前提事実および事件の経過は?
<H社およびXについて>
★ H社は、貨物自動車運送業等を業とする会社である。
★ Xは、平成16年10月、H社の甲府営業所に入社し、Y社便のドライバーとして稼働していた者である(以下、XとH社の間で締結された労働契約を「本件労働契約」という)。なお、XはH社が貸借する富士宮市内のアパート(以下「本件建物」という)に居住している。
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<本件配転命令、本件解雇等について>
▼ 17年2月、H社はXに配送業務を担当させるのは適当ではなく、仕分け作業を担当させるのが相当であると考え、甲府営業所には仕分け作業の業務がないため、静岡営業所への配転を命じた。
▼ その後、H社はXに静岡営業所内において、全国の営業所から送付されてくるタコチャート(走行記録)をチェックし、各営業所単位の走行距離の集計等を行う作業を行わせることにした。
▼ H社では平成22年に入り、従来のタコチャートによる運行管理から各車両搭載のGPSを利用して、運行速度・総運行距離などを計算するシステムを導入することを決定したため、静岡営業所においてXが従事する仕事がなくなってしまった。
▼ H社はXに対して、大宮営業所での帳票管理事務を担当させることを決定し、22年9月、同年11月1日付で同営業所への配転を命じたが(以下「本件配転命令」という)、Xは本件配転命令を拒否した。
▼ H社は23年4月、Xに通知書を交付し、同年5月25日までの大宮営業所への配転を再度命じるとともに、これに従わない場合については、同月31日付で解雇すると予告した。その後もXは大宮営業所への配転に従わず、同社は同日、Xを諭旨解雇した(以下「本件解雇」という)。
▼ Xは本件解雇が無効であるとして、同年7月、静岡地方裁判所富士支部に地位保全等の仮処分を申し立てたが、棄却され、これに対して特別抗告を申し立てたが棄却された。
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<H社の就業規則の定めについて>
★ H社の就業規則には以下のような定めがある。
第9条(人事異動)
会社は、業務の都合により従業員に対して職場もしくは職務の変更、転勤およびその他の人事上の異動を命ずることがある。
第84条(懲戒の種類)
懲戒は、次の6種類とする。
(1)ないし(4)略
(5)諭旨解雇・・・予告期間を設けるか、または予告手当を支給して解雇する。この場合、退職金を支給しない場合がある。
(6)略
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