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#366 「伊藤忠商事事件」東京地裁

2014年7月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第366号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【伊藤忠商事(以下、I社)事件・東京地裁判決】(2013年1月31日)

▽ <主な争点>
精神疾患者の復職可否判断など

1.事件の概要は?

本件は、I社に雇用されていたXが双極性障害(精神疾患)に罹患して休職したものの、休職期間満了前に復職可能な程度にまで回復したなどと主張して、同社に対し、雇用契約上の地位確認請求を求めるとともに雇用契約に基づく未払賃金およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<I社およびXについて>

★ I社は、繊維、機械、情報通信、航空電子、金属、エネルギー、生活資材、化学品、食料、金融、不動産、保険、物流の各分野において、国内、輸出入および三国間取引を行うほか、国内外における事業投資等を行うことを目的とする会社である。

★ Xは、平成8年4月、I社に「総合職」として雇用され、9年4月までの間、建設不動産カンパニー建設部門建設部に勤務し、同年5月以降、生活産業カンパニー木材第二部に営業職として勤務していた者である。

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<Xが休職期間満了による退職に至った経緯等について>

▼ Xは平成16年秋頃から体調を崩し、17年5月17日から同年10月5日まで精勤休暇を取得した後、同月6日から19年4月5日まで欠勤した。

▼ Xは上記欠勤中の18年4月28日から同年7月14日までの間、復職に向けてのトレーニングとして、所定の勤務時間を短縮して出社したが、病状が悪化したため復職には至らなかった。なお、Xは同月18日から病院に入院し、「F21躁うつ病(双極性障害)」(躁状態とうつ状態の病相を繰り返す精神疾患)と診断された。

▼ Xは退院後の19年4月6日から同月23日まで精勤休暇を取得し、その後も定期的に精神科医を受診していたものの、症状は一進一退を繰り返した。

▼ XはI社から19年4月24日以降の休職を命じられたところ、同社の就業規則による休職期間満了日は22年1月23日(Xの休職期間は2年9ヵ月)であった。

▼ Xは上記休職期間中の21年11月頃までにI社に対し復職を申し入れ、同社はこれを受けて、Xのトライアル出社を開始することとした。

★ 「トライアル出社」とは、心の健康問題で休業している従業員が円滑に職場に復帰し、業務が継続できるように支援するとともにI社が復職の可否を判断するために欠勤・休職期間中に当該従業員を出社させ、一定の作業を実施させる「試し勤務」のことである。

▼ Xは21年11月30日からトライアル出社を開始し、同年12月18日までの間は午前9時から正午まで、同月21日から22年1月8日までの間は午前9時から午後3時まで、同月12日から22日までの間は午前9時から午後5時15分まで(定時の勤務時間)、指定された業務に従事した(以下「本件トライアル出社」という)。

▼ I社は22年1月14日、人事部長、健康管理室長、産業医等で構成される健康管理委員会において、「現場の負担が非常に重く、これ以上のトライアルの継続は困難。継続しても長期的に見れば再発の可能性大。今回のトライアル開始後、状態悪化」との審議結果により、Xの復職を不可と判断し、休職期間は満了した(休職期間満了による退職)。

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<I社の就業規則の定め等について>

★ I社の就業規則は、(1)欠勤開始日における勤続が5年以上の従業員が傷病により引き続き欠勤し、1年6ヵ月を超えたときは、休職を命じること(16条1項1号)、(2)休職開始日における勤続が10年以上の従業員の休職期間は2年9ヵ月とすること(18条1項1号)、(3)休職期間中において、休職事由が消滅したとI社が認める場合には、復職を命じること(20条)、(4)休職期間が満了した場合には、退職とすること(21条1項2号)を定めている。なお、Xは欠勤開始日における勤続が5年以上であり、休職開始日における勤続が10年以上であった。

3.元社員Xの主な言い分は?

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