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#232 「山本デザイン事務所事件」東京地裁

2009年4月28日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第232号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【山本デザイン事務所(以下、Y社)事件・東京地裁判決】(2007年6月15日)

▽ <主な争点>
コピーライターの作業中の空き時間は労働時間に含まれるか等

1.事件の概要は?

本件は、コピーライターとして勤務し、その後解雇されたXが、タイムカード記載の退勤時刻をもとに、時間外、休日および深夜の割増賃金の支払いをY社に対し、求めたもの。

これに対し、Y社は「月額の所定賃金に時間外、休日および深夜の割増賃金が含まれていた」、「Xは勤務中ずっと仕事をするという状況になく、食事休憩以外にも1日2、3時間は自由に休憩したり、インターネットで遊んだりしていた」などと主張し、争った。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社およびXについて>

★ Y社は、広告・印刷物に関する企画・制作、グラフィックデザインの制作および販売等を業とする会社である。

★ Xは、平成15年3月にY社に入社し、コピーライターとして勤務し、17年8月に解雇された。

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<Xの勤務時間、賃金額等について>

★ XとY社との間の労働契約の条件(勤務時間、賃金)は、以下のとおりであった。

(a)勤務時間…10時から少なくとも18時30分まで(うち8時間)

(b)賃金…入社以後解雇されるまでのXの賃金額のうち、毎月定額で支給されるものは以下のとおりであった。なお、区分の名称は給与明細書の記載による。

15年3月~同年6月…基本給 36万0000円
15年7月~16年5月…基本給 45万0000円
16年6月~17年1月…基本給 55万0000円
17年2月~同年8月…合計 58万0000円(基本給41万円、業務手当11万6500円、深夜手当2万3300円、調整手当200円、役職手当3万円)

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<Y社におけるXの勤務実態等について>

★ Y社の業務は、ほとんどが松下電器産業(以下、M社)の発注する広告制作であった。通常の広告制作において、コピーやデザインの制作会社は広告代理店と連絡を取り合い、その了解の下に作業を進めていけば足りるところ、M社の広告制作は、広告代理店のほかM社の両方と連絡を取り合い、その了解を得て作業を進めるという点で独特の進行形式をとっており、その手続のために通常よりも時間を要した。

★ 当初のリサーチ開始から広告文が完成するまでには数日間かかり、その広告文が貼り込まれたデザイン制作が完成するまでにも数日間かかる。その数日間の間にも書き直し、推敲、校正の作業が毎日発生し、その間はほとんど深夜や徹夜の作業に追われる。

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