#302 「東日本旅客鉄道事件」東京地裁
2012年1月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第302号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【東日本旅客鉄道(以下、J社)事件・東京地裁判決】(2011年1月28日)
▽ <主な争点>
酒臭を指摘されたこと等による訓告処分、出向命令など
1.事件の概要は?
本件は、J社の助役として勤務していたXが同社に対し、(1)勤務時間中に複数の職員から酒臭を指摘されたこと等に関してなされた平成20年8月12日付の訓告処分が無効であることの確認を求め、(2)同月にされた同年9月3日付出向命令に基づき出向先で勤務する雇用契約上の義務のないことの確認を求めるとともに、(3)上記訓告処分および出向命令が違法であり、それぞれ不法行為を構成するとして、訓告処分、出向命令それぞれに対する慰謝料(各50万円)等の支払いを求め、(4)上記酒臭の指摘に伴い発令された帰宅命令によるXの不就労によってJ社が欠勤控除した欠勤分と同額(1万5818円)の金銭等の支払いを求め、(5)上記訓告処分が無効であるにもかかわらず、同社が期末手当の算定につき減算処理した減額分と同額(8万2089円)の金銭等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<J社およびXについて>
★ J社は、昭和62年4月に国鉄の分割民営化によって設立され、主として東北および関東の各地方において旅客鉄道事業等を営むことを目的とする会社である。
★ Xは、昭和50年5月に国鉄に採用され、J社の設立と同時に同社に採用され、平成19年8月以降、松戸車掌区において助役として勤務してきた者である。
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<本件訓告処分および本件出向命令に至った経緯等について>
▼ Xは平成20年6月23日、同僚である指導車掌の送別会に出席し(少なくともビール中瓶2本分および冷酒一合程度飲酒)、その後、二次会にも参加し、焼酎の水割りを複数杯飲酒した後に帰宅した。
▼ Xは同月24日、通常の勤務よりも早い時間帯に出勤し、常磐線において添乗指導業務を行い(以下「本件添乗指導」という)、午前9時頃、松戸車掌区に戻った。
▼ J社は同日、Xに対し、複数の車掌からXに酒臭がしたとの申告があったことを伝え、前夜におけるXの飲酒状況等を聴取した(以下「本件事情聴取」という)。同社はXに対し、その後の勤務を打ち切って帰宅するよう指示したところ(以下「本件帰宅指示」という)、Xは「添乗指導の際、一部乗務員により『酒臭い』と申告され、退勤を命ぜられたため。」と記載した欠勤届を作成してJ社に提出した上で帰宅した(以下「本件欠勤」という)。
▼ Xは同年8月、J社から「松戸車掌区助役として勤務した際、複数の社員から酒気帯びを指摘され、勤務の一部を欠いたことは、社員として不都合な行為である」と記載された「発令」と題する書面をもって訓告処分を受けた(以下「本件訓告処分」という)。
★ なお、J社が本件訓告処分をするに当たっては、同社東京支社の人事課において、本件事情聴取を含む松戸車掌区からの報告をもとに事実関係を整理した上、賞罰審査委員会に付議され、慎重に審議された結果、本件訓告処分を発令することが決せられた。
▼ Xは同月、J社から同年9月3日付で出向期間を23年11月30日まで、東京臨海高速鉄道(以下、T社)への出向を命ぜられた(以下「本件出向命令」という)。なお、Xの出向先での業務内容は、「りんかい線」における管理駅長の補佐および代理、管理駅における乗務であった。
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<J社の就業規則の定めについて>
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