#39 「プラスエンジニアリング事件」東京地裁
2004年5月26日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第39号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【プラスエンジニアリング(以下P社)事件・東京地裁判決】(2001年9月10日)
▽ <主な争点>
就業規則に定められた退職手続き違反、業務の引き継ぎを行わなかったことによる退職金不支給
1.事件の概要は?
本件は、P社には「退職するときは3ヵ月前までに退職届を提出する」旨の就業規則があるが、これは退職の自由に反し無効であるとして、自己都合退職したXが同社に対して、退職金等の支払いを求めた。これに対し、P社は、Xは後任者に引き継ぎもせず退職したもので、この行為は就業規則の懲戒解雇事由に該当し、懲戒解雇の場合は退職金を支給しないとの規定により、退職金の支給を拒むことができる旨を主張したもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<P社およびXについて>
★ P社は、高級金型部品の製造、販売を業とする会社である。
★ Xは、昭和62年12月、期間の定めなくP社に雇用され、平成3年には本社営業部次長に昇格し、通常の営業活動のほか、顧客から注文を受けた商品の手配や納品などの業務も行っていた者である。
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<Xが退職するまでの経緯、業務の引き継ぎ等について>
★ 平成8年、XはP社の大口顧客であるF社の担当となった。F社に対する売掛金の管理は、P社の経理部が行っていたが、F社からの支払いは月末締めの翌々月末が期日の手形で支払われることとされていた。
★ しかし、F社がP社から納入された商品に対して行っていたテストの結果によっては入金まで3ヵ月以上かかることがあり、それに伴って、売掛金が3,000万円ほどになることもあった。
▼ 11年1月13日、Xは直属の上司であるA部長に対し、退職希望日を2月15日と記載した退職届を提出した。同部長は翌14日、P社のB代表に対し、Xから退職の意向が伝えられたことを報告した。同月18日、Xは同代表と面談した際、退職の意向を伝えた。
▼ Xは2月24日まで通常通り勤務したが、P社がXの退職を正式に承認していなかったので、Xは後任者に業務を引き継ぐことができなかった。同日の勤務終了後、Xは同日かぎりで退職する旨の書面、健康保険証その他同社に返還すべき書類等を置いて、事務所を去った。25日以降、Xは出社しなかった。
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