#262 「東日本電信電話事件」東京地裁(再掲)
2010年6月23日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第262号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 参考条文
★ 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
(高年齢者雇用確保措置)
第9条 定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
1.当該定年の引上げ
2.継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
3.当該定年の定めの廃止
2 事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第2号に掲げる措置を講じたものとみなす。
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■ 【東日本電信電話(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2009年11月16日)
▽ <主な争点>
高年齢者雇用安定法の私法上の効力等
1.事件の概要は?
本件は、平成20年3月31日までに満60歳の定年退職日を迎えたAら10名が、60歳定年制を定めたH社の就業規則は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「雇用安定法」という)9条1項に違反して無効であると主張して、Aらは従業員たる地位を有しているとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、賃金請求権に基づく20年4月以降の賃金等の支払いを求めたもの。
なお、H社は事業構造の変更方針にともない、雇用形態、処遇体系多様化の制度を実施し、15年3月31日までに満51歳以上となる従業員を対象に、14年4月30日に同社を退職し、同年5月1日に同一都道府県内のグループ会社に雇用され、定年の60歳まで勤務した後、61歳以降は65歳まで契約社員として同社に再雇用される退職・再雇用型と、H社に満60歳まで勤務し、その後は再雇用されない満了型を選択させた。H社は雇用形態の選択を求めたが、Aらはいずれも回答しなかったため、60歳満了型を選択したものとみなされ、同社を定年退職したものと扱われた。
2.前提事実および事件の経過は?
<AらおよびH社について>
★ Aら10名は、いずれも日本電信電話公社(以下「公社」という)に期間の定めのない労働者として雇用された。
★ 公社は、昭和60年4月、民営化され、日本電信電話株式会社(以下「N社」)に一切の権利義務を引き継いで解散し、AらはN社の従業員となったが、N社はその後、持ち株会社となり、平成11年7月、東日本地域における地域電気通信業務を目的とする株式会社としてH社を設立し、Aらとの雇用契約も同社へと承継された。
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<H社のキャリアスタッフ制度、本件制度等について>
▼ H社は、N社の人事制度を基本的に承継し、就業規則で定年を満60歳、H社を定年退職した者または同社から転籍し転籍先で定年退職した者を1年間の雇用期間で再雇用し、欠勤日数が一定日数を超えた場合または更新時において健康に問題がないと認められない場合を除き、業務上の必要性および本人の希望により、満65歳に達した日以降の最初の3月31日まで契約を更新することができるという制度(以下「キャリアスタッフ制度」という)を定めた。
▼ H社は13年4月以降、構造改革を策定・実施し、同年12月、以下の内容の雇用形態、処遇体系多様化の制度(以下「本件制度」という)を実施した。
★ 15年3月31日までに満51歳以上となる従業員を対象に、14年4月30日にH社を退職し、同年5月1日に同一都道府県内のグループ会社に雇用され、定年の60歳まで勤務した後、61歳以降はキャリアスタッフ制度と同様の仕組みで65歳まで契約社員として同社に再雇用される退職・再雇用型と、H社に満60歳まで勤務し、その後は再雇用されない満了型を選択させるというものである。
★ 退職・再雇用型の契約社員の更新基準は、キャリアスタッフ制度と同じで、各グループ会社の就業規則に明記され、実際も上記除外事由(一定の欠勤日数の超過または健康上の問題)に該当しないかぎり、希望者全員の契約が更新され、業務上の必要性を理由に更新拒否された者は存在しない。
★ 本件制度の導入により、キャリアスタッフ制度は14年4月30日に廃止された。H社は16年の雇用安定法改正(18年4月1日施行)を受け、同年3月30日付で就業規則を改正して、本件制度を就業規則上に明記した。なお、雇用形態の選択、通知をしない場合、60歳満了型を選択したものとみなすこととされた。
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