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#266 「東京都自動車整備振興会事件」東京地裁

2010年8月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第266号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【東京都自動車整備振興会(以下、T法人)事件・東京地裁判決】(2009年1月19日)

▽ <主な争点>
窓口や電話での対応の悪さに対して苦情が多い職員に対する降格処分等

1.事件の概要は?

本件は、T法人に副課長から係長に任ずるとの命令を受けたXが、同法人から不当な降格をされたとして、その降格処分の無効確認および降格前の地位にあることの確認、ならびにこれに基づき減額された役職手当の差額の支払いを求め、併せて、上記降格処分が名誉権侵害および不当労働行為の不法行為であると主張して、不法行為に基づく損害賠償等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T法人およびX等について>

★ T法人は、国土交通省関東運輸局管轄の公益社団法人である。同法人の事業の主な目的は、(1)自動車の整備に関する設備の改善および技術の向上を促進すること、(2)自動車整備事業の業務の適正な運用を確保すること、(3)自動車ユーザーの整備相談に応ずること、(4)自動車整備士を養成すること、(5)自動車検査登録関係業務の相談に応ずることなどである。

★ T法人の会員は、(1)東京都内に住所または事業場を有し、同法人の目的に賛同して入会したもので支部に所属して自動車分解整備事業を行うもの(正会員)、(2)本会の事業を賛助するため理事会の決議を得て入会したもの等(賛助会員および特別会員)で構成され、主として会員からの会費で運営されている。

★ Xは、昭和54年5月、T法人に入職し、事業課、業務課等に勤務した後、平成16年11月、足立支所に配置替えとなり、同支所副課長に任用された。

★ Xは、個人加盟の労働組合である全統一労働組合(以下「全統一」という)に所属し、副中央執行委員長である。T法人の同組合の従業員は、同組合の職場分会(以下「分会」という)を構成している。

★ T法人の人事制度は、人事規程により役職を事務局長、部長、次長、課長、係長および主任と区分している。また、給与規程により、事務局長ないし係長について役職手当(本給に一定率を乗じた金額)が支給される。

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<本件降格に至るまでの経緯等について>

▼ T法人と分会は、例年、分会所属の組合員の賃上げについては、団体交渉において協議して合意を形成し、決定していた。平成17年4月以降の賃上げおよび賞与の決定について、全体として容易に合意に達しなかった。

▼ そこで、全統一および分会はT法人に対し、同法人代表者出席の団体交渉を要求し、抗議を申し入れるなどし、さらに同年11月、当時のT法人代表者Aの経営するニュートヨペット販売(T法人の会員会社。以下「N社」という)の事務所に赴いて昇給および賞与の支払い等を求める申入れを行った。

▼ 同年12月、T法人は分会に対し、上記の抗議行動を「多衆して押しかけ、不法に侵入し会長の面会強要と強談威迫行為を行い、もって同社の業務とともに振興会の業務を違法に妨害した」とする「抗議・警告文」を送付した。

▼ T法人は、上記申入れ行動に参加していたXほかの組合員に対し、抗議・警告し、弁明書の提出を求める業務指示書を交付しようとしたが、Xはこれに応ぜず、全統一および分会がこの指示を不当労働行為であると抗議すると、同法人は弁明の権利を放棄したものとみなすと通告した。

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