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#71 「住信情報サービス事件」大阪地裁

2005年1月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第71号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【住信情報サービス事件(以下、S社)事件・大阪地裁判決】(2001年8月31日)

▽ <主な争点>
時間外割増賃金の算出方法変更、労使慣行の成立

1.事件の概要は?

本件は、時間外割増賃金の算出方法として、従来、有給の厚生特別休暇を休日扱いし、所定勤務時間から控除してきた扱いを改め、就業規則のとおりに控除しないこととした変更は就業規則に反し、そうでないとしても労使慣行に反し、不利益変更であり無効であるとして、従前の算出方法によるべきことの確認および差額賃金のの支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは昭和60年3月からS社に雇用されている者であり、北地域労働組合はらからS社分会の分会長である。

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<S社の就業規則の定め、厚生特別休暇等について>

★ S社の就業規則には、「休日は土曜、日曜、国民の祝日および年末年始」と定められており、厚生特別休暇(注:在籍日に応じて2日または3日付与)は「休日」ではなく「休暇および休業」の項に定められている。また、時間外割増賃金は、基本給、職務給などの合計額を一年における月平均勤務時間で除して1時間当たりの単価を算出することとされている。

★ S社では10年以上にわたり、就業規則上の定めにかかわらず、厚生特別休暇を休日扱いにして、所定勤務時間から厚生特別休暇を控除して、月平均勤務時間および時間外割増賃金の単価を算出していた(以下、これを「従前算出方法」という)。

▼ S社は平成11年7月、従前算出方法から就業規則上の定め通りの算出方法に変更して実施した。これによって月平均勤務時間が従前算出方法より厚生特別休暇の分多くなり、時間外割増賃金単価が40円未満ほど引き下げられることになった。

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