#174 「ドワンゴ事件」京都地裁
2007年2月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第174号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 用語の説明
「専門業務型裁量労働制」とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、厚生労働省令および厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度をいう。
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■ 【ドワンゴ(以下、D社)事件・京都地裁判決】(2006年5月29日)
▽ <主な争点>
専門型裁量労働制にかかる労使協定の適用の有無
1.事件の概要は?
本件は、XがD社に対し、大阪開発部に勤務するXには、D社と同社の東京本社に勤務する従業員との間で締結された専門型裁量労働制に関する労使協定は適用されず、また振替休日の実施につき、適法な休日振替の処理がなされていないなどと主張して、時間外労働、休日労働および深夜労働に対する割増賃金(108万6821円)と、割増賃金と同額の付加金、ならびに不法行為による損害賠償として金60万円の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<D社およびX等について>
★ D社は、コンピュータおよびその周辺機器、ソフトウェア製品の企画、開発、製造、販売、輸出入および賃貸などを業務内容とする会社である。
★ Xは、平成15年9月、D社に契約社員として入社し、同年12月、以下の契約内容により、正社員として専門型裁量労働制にかかる雇用契約を締結した(Xは16年7月、D社を退職した)。
(ア)勤務場所=大阪開発部
(イ)職務内容=コンピュータソフトのプログラミング
(ウ)勤務時間=裁量労働制で1日8時間勤務
(エ)休日=年間104日以上とし、1週間の労働時間40時間以内を守りながら、Xの裁量で決定する。Xは月間出勤管理簿に毎週2回以上の休日予定日を記載して、D社に提出しなければならない。
(オ)賃金=基本給(月給制)、住宅手当、通勤手当とし、毎月末日締めの
当月25日支払い
(カ)賞与=毎月6月と12月に、Xの過去6ヵ月間の勤務成績に応じて支給することがある。
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<D社における専門型裁量労働制について>
★ D社の従業員就業規則には、就業時間や休日、休日の振替および割増賃金の支払いに関する定めのほかに、専門型裁量労働制に関する定めがある。同社はこの定めに基づき、12年6月、当時の本社(東京)に勤務する従業員の過半数を代表する者との間で、専門型裁量労働制に関する、以下の内容の労使協定(以下「本件労使協定」という)を締結した。
(1)適用対象業務=新製品の研究開発、情報処理システムの分析・設計、新たなデザインの考案
(2)裁量労働の原則=上記の適用対象業務に従事する社員については、当該業務の性質上、業務遂行の手段および時間配分の決定などについては、社員本人の裁量に委ねるものとし、その決定に関し、具体的指示を与えない。
(3)勤務時間の算定=裁量労働に従事する社員の1日の勤務時間については、実勤務時間の長短にかかわらず、所定勤務時間(8時間)を勤務したものとみなす。
(4)休日・深夜の扱い=(ア)裁量労働に従事する社員は、所属長の命令または承認を得ずに休日勤務または深夜労働を行ってはならない。(イ)所属長の命令または承認により、休日勤務または深夜労働を行った場合には、給与規程の定めるところにより手当を支給する。(ウ)裁量労働に従事する社員が休日に勤務した場合は、所定勤務時間を勤務したものとみなす。
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