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#400 「財団法人 ソーシャルサービス協会事件」東京地裁(再々掲)

2015年12月9日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第400号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【財団法人 ソーシャルサービス協会(以下、S協会)事件・東京地裁判決】(2013年12月18日)

▽ <主な争点>
事業所廃止に伴う解雇など

1.事件の概要は?

本件は、XがS協会による事業所廃止に伴う解雇は無効であると主張して、同協会に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金および賞与ならびに不法行為(不当解雇)に基づく損害賠償金の支払いを求めたもの。

S協会は、Xと雇用契約を締結したのは同協会ではなく、権利能力なき財団である東京第一事業本部であると主張して、X・S協会間の雇用契約の存在を争うとともに、仮に雇用契約が存在するとしても上記解雇は有効であると主張した。

2.前提事実および事件の経過は?

<S協会およびXについて>

★ S協会は、日雇労働者を中心とする低所得者階層の福祉を増進すること等を目的とする財団法人であり、平成24年1月現在、東京都内に主たる事務所を置くほか、従たる事務所として、25の住所地に事務所を置いていた。

★ S協会は22年9月頃、従たる事務所のうち、東京第一事業本部の運営や経理をめぐる不明朗な事態を調査し、同本部の事業所長を解任するなどした。

★ Xは、遅くとも22年11月、S協会または東京第一事業本部との間で期間の定めのない雇用契約を締結し(以下「本件雇用契約」という)、あさぎり荘(社会福祉法に基づき、東京都知事に対し届出を行っている生活保護受給者の施設)で勤務を開始した者である。なお、労使双方が署名捺印した雇用契約書は作成されなかった。

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<本件解雇に至った経緯等について>

▼ S協会は22年12月頃、あさぎり荘の運営をめぐって係争中だった中高年事業団○○企業組合に対し、同協会または東京第一事業本部が行うあさぎり荘の運営を妨害しないことおよびその運営に関わる帳簿の引き継ぎ等を求める仮処分を申し立てたが、23年6月頃、同申立ては却下された。

▼ XはS協会または東京第一事業本部において、「S協会 あさぎり荘 施設長」という肩書が付された名刺を使用し、また、23年8月23日までの間、社会福祉法に基づく東京都知事に対するあさぎり荘に係る届出もXを施設長として届出されていたが、同年9月5日までに8月23日付であさぎり荘の施設長をXから変更した旨が届出された。

▼ S協会または東京第一事業本部はXに対し、23年10月13日付解雇通知書により、「東京第一事業本部の事業閉鎖に伴い」同日をもってXを解雇するとの意思を表示した(以下「本件解雇」という)。

★ S協会または東京第一事業本部はXに対し、同月27日付解雇理由証明書により、本件解雇は「東京第一事業本部の閉鎖を理由とするものである」ことを証明するとした。

3.職員Xの主な言い分は?

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