#5 「S社(性同一性障害者解雇)事件」東京地裁(再掲)
2003年9月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第5号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 用語の解説
「性同一性障害(性転換症)」とは、「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の身体がどちらの性に属しているかを認識しながら、人格的には自分が別の性に属していると確信し、日常生活においても別の性の役割を果たし、別の性になろうとする状態。生物学的性と心理的社会的性の不一致に苦悩している点に特徴を有する精神疾患」をいう。
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■【S社(性同一性障害者解雇)事件・東京地裁決定】(2002年6月20日)
▽ <主な争点>
性同一性障害者の社員が業務命令に従わなかったことを理由とする懲戒解雇
1.事件の概要は?
本件は、S社が性同一性障害者である社員Xを女性の服装、容姿で出勤しないよう命じた業務命令に従わなかったこと等を理由として懲戒解雇し、これを不服としたXが当該解雇の無効を主張し、賃金等の仮払い請求の仮処分を申し立てたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Xについて>
★ Xは、平成9年、S社に雇用された生物学的性は男性の労働者であるが、平成12年に性同一性障害の診断を受け、平成13年には家庭裁判所の許可を受けて、戸籍上の名を女性名に変更した者である。
<Xに対する自宅待機命令、懲戒解雇に至った経緯等について>
▼ 14年1月、XはS社から配置転換を内示され、配転承諾の条件として、(1)女性の服装で勤務する、(2)女性用トイレの使用、(3)女性用更衣室の使用を申し出た(以下「本件申出」という)。
▼ S社はXに対し、(A)同社が本件申出を承認しなければ、配転を拒否する、(B)配転には応じるが、その後の勤務において本件申出を受け入れてほしい、のいずれかの立場を選択するよう求め、Xは(A)を選んだ。
▼ 同年2月、S社はXに対し、配転の辞令および本件申出を承認しない旨の通知書を発した。Xは上記各書面を破棄したものに、公的機関にすべての事実を告発する旨を朱書したメモを同封し、同社に返送した。
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