#478 「日本通運事件」東京地裁(再々掲)
2019年1月9日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第478号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【日本通運(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2017年10月23日)
▽ <主な争点>
業務時間外の酒気帯び運転と退職金の不支給事由など
1.事件の概要は?
本件は、国内最大手の運送業者であるN社の空港営業第一課係長として、運転業務ではなく、空港における航空機の搭乗手続等に従事していたXが就業時間外に酒気帯び運転をしたことから、同社がXを懲戒解雇処分とし、退職金不支給条項により退職金を不支給にしたところ、Xが退職金不支給条項に該当する事由の不存在等を主張して、自己都合退職した場合の退職金等の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<N社およびXについて>
★ N社は、鉄道利用運送事業、貨物自動車運送事業、海上運送事業、利用航空運送事業等を営む会社であり、甲社から空港における航空機の搭乗手続等の業務を請け負っている。
★ Xは、平成元年7月、N社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、27年11月当時、空港営業第一課係長として航空機の搭乗手続等に従事していた者である。
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<本件酒気帯び運転、本件事故、本件懲戒解雇処分に至った経緯等について>
▼ Xは27年11月17日、呼気1リットルにつき0.5ないし0.55ミリグラムのアルコールを身体に保有する状態で、仙台市内の当時の自宅からスーパーマーケット(以下「本件店舗」という)まで、自己所有の普通乗用自動車を運転した上(以下「本件酒気帯び運転」という)、本件店舗駐車場において、車を後退させて駐車しようとして運転を誤り、同店舗に車を衝突させ、ガラス等を損壊する事故を発生させた(以下「本件事故」という)。
▼ Xは現場に臨場した警察官により飲酒検知を受け、その場で道路交通法違反(酒気帯び運転)により現行犯逮捕された。
★ 本件酒気帯び運転および本件事故は翌18日、地方紙で報道され、会社員としてXの実名等が掲載されたが、N社の従業員であることは記載されていなかった。
▼ Xは同月20日、N社に対し、退職願を提出したが、同社は自己都合退職に応じず、28年4月20日付でXを懲戒解雇処分とした(以下「本件懲戒解雇処分」という)。
★ N社の就業規則84条および労働協約66条には「飲酒し、または無免許で運転、操作したとき」が解雇事由とされており、(1)就業時間内の飲酒運転に限定する規定や(2)運転業務に係る従業員に限定する旨の文言はなかった。
★ N社はXに対し、27年11月から解雇時までの基準内賃金、年末一時金および解雇予告期間の不足日数分の平均賃金の合計340万5985円を支払った。
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