#130 「マイスタッフ・一橋出版事件」東京地裁(再掲)
2006年3月29日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第130号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【マイスタッフ(以下、M社)・一橋出版(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2005年7月25日)
▽ <主な争点>
派遣労働者の雇止め/派遣先企業との関係(黙示の労働契約の存否)
1.事件の概要は?
本件は、M社(人材派遣業者)からH社(出版社)に派遣されたXが、M社・H社間の労働者派遣契約が打ち切られたことによって、M社との間の派遣労働契約が終了したことの効力を争い、M社とH社は一体であるとして、両社に対し、M社との間の派遣労働契約の存在、およびH社との間の黙示の労働契約の成立を前提とする労働契約上の地位の確認、および労働契約終了後の賃金の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<M社、H社およびXについて>
★ M社は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という)に基づいて設立された、人材の派遣事業、出版物の編集・制作、その他事務処理業務の請負等を目的とする会社である。
★ H社は、学術書・教科書・学習用教材の出版および販売等を目的とする会社である。なお、同社はM社の株式を有しており、その出資比率は17.5%である。
★ M社とH社はそれぞれ別個の会社として営業を行っているが、両社の創業者であり、M社の代表取締役であるAは平成12年までH社の代表取締役を兼任していた。また、M社の取締役であるBはH社の参与として、各種編集業務に従事している。
★ Xは13年5月21日から15年5月20日までの間、M社からH社に派遣労働者として派遣され、高校家庭科教材の編集およびこれに付随する業務(以下「本件編集業務等」という)に従事した。
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<XがM社と派遣労働契約を締結してから雇い止めされるまでの経緯>
▼ 13年4月、M社は労働者派遣に関する基本契約に基づき、H社から本件編集業務等を遂行するための派遣社員1名の派遣依頼を受けたが、派遣希望登録者に適当な人材がいなかったことから、新聞に派遣社員の募集広告を掲載した。
▼ Xは上記募集に応募し、書類審査・面接試験等を経て、M社から採用された。なお、面接試験はH社会議室で行われ、BのほかM社の取締役でH社代表取締役でもあったCも出席した。
▼ 同年5月、M社はXとの間で「派遣先はH社、雇用期間は同月21日から同年11月20日までの6ヵ月間」等とする条件で雇用する旨の派遣労働契約を締結した。
▼ M社は同年11月、14年5月および同年11月、Xとの間で雇用期間6ヵ月間等、上記と同様の条件で派遣労働契約を締結し(以下、XとM社との間で締結された各派遣労働契約を一括して「本件労働契約」という)、引き続きH社にて本件編集業務等に従事させた。
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