#247 「ジェイエスキューブほか事件」東京地裁(再掲)
2009年11月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第247号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ジェイエスキューブ(以下、J社)ほか事件・東京地裁判決】(2009年3月10日)
▽ <主な争点>
派遣先のインセンティブ制度の廃止による報酬減額分の請求の可否等
1.事件の概要は?
本件は、J社に雇用され、ドコモサービス(以下、D社)に労働者派遣されて、その業務に従事していたXが、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下、「労働者派遣法」という)40条の5(派遣労働者の雇用)* の規定にもとづいて、D社に対して雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を、D社においてインセンティブ制度が廃止されたことにより、その報酬が支払われなくなったことから、両社(J社・D社)に対し、各雇用契約等にもとづいて、インセンティブ制度にもとづく報酬請求権を有する雇用契約上の地位にあることの確認とそれを含む賃金の支払いを求めたもの。
* 労働者派遣法 第40条の5
「派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(第四十条の二第一項各号に掲げる業務に限る。)について、派遣元事業主から三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該三年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならない。」
2.前提事実および事件の経過は?
<J社、D社およびXについて>
★ J社は、労働者派遣事業を営む会社である。
★ D社は、無線呼び出し、携帯電話およびPHSの料金の回収代行に関する業務等を行う会社である。
★ Xは、平成8年3月、J社に雇用期間を原則3ヵ月とする契約社員(時給制)として採用され、更新を重ねた後、13年3月から期間の定めのない派遣型正社員(月給制)となった者である。
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<本件インセンティブ制度、J社からXに対する支給額等について>
▼ Xは8年3月から、D社の東京ポケットベル料金センターに派遣され、その業務に従事したが、10年3月からは、同社の東京料金サービスセンターに派遣され、第二料金部門において、携帯電話の未納料金の回収業務等に従事した。
▼ D社においては、5年3月に個人インセンティブ制度(以下、「本件インセンティブ制度」という)が導入された。本件インセンティブ制度は、D社の東京料金サービスセンター第二料金部門において、Xが就業を始めた10年3月以降も存続していたが、20年3月をもって廃止された。
▼ J社はXに対し、本件インセンティブ制度に基づく報酬に相当する金額を「能率給」として支払っていた。
▼ J社からXに対し、19年12月から20年2月までの各月に支払われた総支給額は、以下のとおりである。
19年12月 38万2061円(うち、能率給13万円)
20年1月 36万8700円(うち、能率給12万2733円)
20年2月 36万4147円(うち、能率給11万6439円)
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