#451 「渋谷労働基準監督署長事件」東京地裁
2017年12月13日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第451号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【渋谷労働基準監督署長(以下、S労基署長)事件・東京地裁判決】(2016年9月8日)
▽ <主な争点>
会社代表者の飼育していた金魚の容器を移動する際に起きた骨折と業務遂行性など
1.事件の概要は?
A社の従業員として勤務していたXは同社の事業場の建物内で代表者が飼育していた金魚の容器を持ち上げて移動しようとした際、第12胸椎圧迫骨折の傷害(本件傷害)を負った。Xの死後、その妻であるYが本件傷害は業務上の負傷に該当するとして、S労基署長に対し、労災保険法に基づく未支給の保険給付(療養補償給付および休業補償給付)の請求をしたが、同労基署長はいずれも不支給処分(本件各処分)をした。
本件は、Yが国に対し、本件傷害が上記各補償給付の対象としての「業務上の負傷」(労災保険法7条1項1号)に該当するから、本件各処分が違法であるとして、それらの取消しを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<A社、XおよびYについて>
★ A社は、金属加工を主たる業務とし、精密機械の部品製造を請け負うなどしている会社である。
★ X(昭和18年生)は、A社において勤務していた者である。なお、同社の代表者であるBとは家族ぐるみの付き合いをしており、Bは関係者に対し、Xのことを四十数年来の友人と紹介するなどしていた。
★ Yは、Xの配偶者(妻)である。
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<本件事故の経緯および状況等について>
★ Bは個人的な趣味として金魚を飼っており、住居兼工場である事業場(以下「本件事業場」という)2階の私用スペースに金魚の入った容器(概ね横1600ミリ×縦1000ミリ×高さ200ミリ)を置いていた。
▼ Xは平成21年10月13日、上記スペースにおいて容器を移動する作業を行った際に腰を負傷し、傷害を負った(以下「本件事故」という)。当時、A社はいわゆるリーマン・ショックにより受注業務が激減し、長期間にわたって仕事がない時期があり、本件事故当日も仕事がなかった。
▼ Xは本件事故当日の午後2時25分頃、甲整形外科を受診し、「腰部神経根症」と診断された。さらに、同月16日、乙整形外科を受診し、レントゲン撮影等の結果、「第12胸椎圧迫骨折」と診断された(以下「本件傷害」という)。
★ Xは24年6月、自宅で縊死した。
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<労災申請に至った経緯等について>
★ XおよびYはA社が労災保険料の支払を行っていなかったことなどから、本件事故につき労災申請はできないものと諦めており、同社に対しても労災申請を行いたい旨働きかけたこともなかったが、Xの死亡後、親族からの勧めによりYは労災申請を行うこととした。
▼ Yは本件傷害が業務上の負傷に該当するとして、25年6月、S労基署長に対し、労災保険法に基づき、未支給の保険給付(療養補償給付および休業補償給付)の請求をした。これに対し、同労基署長は同年9月、本件傷害が業務遂行中の災害とは認められないとして、いずれも不支給処分(以下「本件各処分」という)をした。
▼ Yは本件各処分を不服として東京労働者災害補償保険審査官に対し審査請求を行ったが、同審査官は26年3月、同審査請求を棄却する旨の決定をした。
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