#63 「京都簡易保険事務センター事件」京都地裁(再掲)
2004年11月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第63号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【京都簡易保険事務センター(以下、Kセンター)事件・京都地裁判決】(2003年1月21日)
▽ <主な争点>
受動喫煙による健康被害、嫌煙権と安全配慮義務
1.事件の概要は?
本件は、郵政事業庁の職員でKセンターに勤務していたXら2名が、庁舎内における受動喫煙によって健康上の被害を被っているとして、国に対し、安全配慮義務、嫌煙権または不法行為に基づき、全庁舎内部を禁煙とする措置をとること、および国が安全配慮義務を怠ったことによる損害賠償を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Kセンター、XおよびYについて>
★ 国は、郵政事業庁の地方支分部局として、Kセンターを設置している。
▼ XとYは、いずれも郵政事業庁の職員として、Xが平成4年11月以前から、Yは7年10月以降、Kセンターに所属し、その庁舎内で勤務している者である。
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<Kセンターにおける喫煙の規制の推移について>
★ Kセンター庁舎のうち電子計算機室においては従前から終日禁煙となっており、職員はこれを遵守している。
▼ 2年8月、全職員に対して文書を配布し、勤務時間のうち午前8時30分から1時間および午後1時15分から1時間を禁煙タイムとして、職場における喫煙を自粛するように呼びかける措置がとられた。
▼ 同年12月からは食堂内に喫煙席が設置され、喫煙席以外の場所での喫煙を自粛するよう協力を求める文書を各係単位で配布する措置がとられた。3年2月には食堂内の喫煙席に換気扇が設置され、その頃から毎月一回「禁煙タイム」への協力を求める所内放送が流されるようになった。
▼ 8年2月、労働省(当時)通達により「職場における喫煙対策のガイドライン」が示されたことから、同年4月、Kセンターの安全衛生委員会が全職員を対象に喫煙対策に関するアンケートを行い、職員559名(うち喫煙者132名)が回答した。その結果は以下のようなものであった。
(1)事務室内に喫煙室を設け、その他を禁煙とする案
賛 成・・・268名(うち喫煙者 50名)
反 対・・・176名(うち喫煙者 67名)
(2)事務室内を禁煙とし、事務室外(廊下等)に喫煙場所を設ける案
賛 成・・・285名(うち喫煙者 27名)
反 対・・・179名(うち喫煙者 90名)
(3)Kセンターの庁舎内を全面的に禁煙にする案
賛 成・・・114名(うち喫煙者 2名)
反 対・・・273名(うち喫煙者118名)
▼ 上記アンケートの結果を踏まえ、同年7月、各階事務室に喫煙室が設置され、職場内における喫煙は喫煙室内で行うよう協力を求める文書が全職員に配布された。しかし、Kセンターでは喫煙室以外での事務室における喫煙を禁止していたわけではなく、9年4月当時、管理職を含めて相変わらず事務室内の自席等で喫煙する者も十数名ほどいた。
★ Kセンターの喫煙室は、既存の建物の一部をパーテイションで区切って設けられたため、天井の蛍光灯設置箇所の付近などでは、パーテイションに透き間が存在していることがある。
▼ 10年3月、京都地裁がKセンターの庁舎を検証したが、そのころを境に喫煙室以外の事務室等において喫煙する者はほとんどいなくなった。
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<Xらの受動喫煙による健康上の被害について>
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