近藤選手は2番がいいのか5番がいいのか?-データから紐解く起用法-
今シーズン開幕から言われていた、近藤健介選手の打順起用に関する議論。
メジャーの影響を受け、最近は多くの球団が2番に強打者をおく「2番最強説」を掲げる中、ホークスは5番に近藤選手を置き続けている。
そこでどっちがいいか検証してみることにした。
対象とするのは、48試合目(5/31)の第2打席まで。すなわち柳田選手が負傷交代するまでとした。(それ以降は柳田ー山川ー近藤の構図が崩れるからである。)
※近藤選手が途中交代した試合はそのイニングまでのスコアで成績、勝敗を評価することにする。
⚫︎2番最強説とは
2番最強説とは2番打者によく出塁して、長打も打てるいわばチームの最強打者を置くということを指している。指標としてはOPS=出塁率+長打率をもちいる。
メジャーでは、15年ほど前からその兆候がみられ、2023年のシーズンでは2番打者の平均OPSがクリーンナップの打者のOPSを上回っている。
日本でも、開幕戦でロッテ・ソト選手、DeNA・オースティン選手と長距離バッターを2番に据え、4月にはヤクルトが2022年三冠王の村上選手を2番に置き「2番最強説」が日本のプロ野球においてもトレンドになりつつある。
一方、ホークスは開幕前から近藤2番の声がありながら6月14日現在、近藤選手は5番で固定。一部のファンから不満が出ているのが現状である。
⚫︎近藤選手と2番打者のOPS
では、近藤選手と2番打者、今年1番多く2番を打っている今宮選手の打撃成績を比較してみよう。
まずは、近藤選手の成績から
次に、48試合目までのスタメン2番打者の内訳はこの通り
今宮選手が多く2番を務め、川瀬選手が続く。その今宮選手の成績はこちら
今宮選手のOPSが7割2分9厘に対し、近藤選手は9割3分9厘。この成績の差をみると2番近藤説を唱える一部のファンの言い分はわかる。
ただ、これが実際の得点差、勝敗に影響を与えているのだろうか?実際に打順を入れ替えた場合、結果がどうなるのかを検証してみた。
⚫︎近藤選手を2番に置くことで起きるイメージ
OPS=出塁率+長打率であるため、
・2番に置くことで打席数をたくさんまわすことができる
・出塁率の高いバッターを2番に置くことで、3番や4番にタイムリー(2ラン、3ランホームラン)を打ってもらう
・前に出塁した走者がいた場合、長打で返すことができる
上記を満たすことが理想である。では、まず現状のホークスの打順をみてみよう。
⚫︎近藤5番固定の場合(ベンチマーク)
今シーズンの打順はこのパターンである。
1、2番には走力やバントの上手い選手を置き、クリーンナップで返す。いわば、教科書どおりの打順の組み方である。
⚫︎近藤の打順を変えてみる
①はじめに
まず、これはあくまで打席の結果を入れ替えた結果である。直近の打順を入れ替えることで対戦するピッチャーを比較的合わせることができる。しかし、前後バッターとの相乗効果(相手バッテリーの配球変化、与えるピッチャー心理)などデータで読み取れないことは考慮されていない。
つまり、以下の結果はすごく短絡的な結論であることはご容赦いただきたい。
②方法
上に示すように、近藤選手の打順を2番にもってきた。対する2番打者はクリーンナップを打つタイプの選手ではない(栗原選手以外)そこで、現実で2番を打っていた打者は7番に置くこととし、3番柳田選手、4番山川選手は固定し、5番、6番打者は繰り上げた打者を使うこととした。
そして現実の打撃成績をもとに得点、失点がどうなるかを1試合1試合Excelへとまとめていく。
そして、近藤選手が出場しているイニングを対象とした。下の試合では9イニング21得点だが、5回に近藤選手は代走を送られているため、対象となるのは5回20得点である。
③検証結果
近藤選手を2番に据えると、26勝17敗4分と現行オーダーの勝敗と比較し、貯金が5つ減る結果となった。
得点力も低下した。
では、OPSの高い近藤選手を2番にしたにも関わらず得点力が下がってしまったのか?
狙ったとおり近藤選手を2番に置くことで、現行よりも今の2番打者よりも得点が多いことがわかる。打点についても現状5番を打ったケースに比べると落ちるのだが、今の2番打者よりは打点を稼ぐ計算となっている。すなわち、近藤選手が「狙い通りの2番打者の仕事」をしてることはわかる。
だが、今の2番打者は7番に据えることで極端に成績が下がる。得点が12点も下がっているというのが顕著である。得点が下がるということは後ろの打者が打ててないことが起因している。今は近藤選手含めたクリーンナップが打って得点をとっているのだが、それが起こらないからである。
つまり、
近藤を2番に置く=近藤を5番に置かないリスク
になっているのである。
④では、何番においた方がよいのか?
今回考えたのはこの3パターン
・近藤4番説
柳田ー近藤ー山川のクリーンナップ
・近藤3番説
近藤ー山川ー柳田のクリーンナップ
近藤ー柳田ー山川のクリーンナップ
結果は…
まずは、勝敗数の比較から。現行貯金14に対し、近藤4番では貯金16、近藤3番の2パターンでも貯金17〜18と上回っている。
だが、得点では3パターンとも現行の結果を上回ることはできなかった。得点を失点で割った値で比較してみると、近藤4番では現行と同等の結果だったが、近藤3番にすると下回り、特に近藤-山川-柳田のクリーンナップの場合では大きく下回る結果となった。
以上をまとめると
勝敗:近藤3番>近藤4番>近藤5番(現行)
得点力:近藤5番=近藤4番>近藤3番
となり、データからみると近藤選手を4番に置き、柳田ー近藤ー山川のクリーンナップとして打順を組む方が理想であることがわかった。
データを紐解くと、想像以上に今のオーダーが良い結果を出せていることにはびっくりしたが、これは圧倒的な長打力を持つ山川選手、長打力も率(出塁率)も残せる柳田選手・近藤選手がいるホークスだからこその結果だったのかもしれない。(他球団なら2番最強説が良好な結果を生むかもしれない)
現在、首位を独走するホークス。ギータの負傷でオーダーにも影響は出ているが、一戦一戦大事に戦って欲しい。そして、これ以上ケガ人が出ないようにコーチ陣にはマネジメントしてもらいたい。
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