送りバントをはじめたのは日本人?-高校野球を見てふと思ったこと-
高校野球のルール変更と送りバント
連日行われている夏の甲子園。猛暑対策で、クーリングタイム導入や朝・夕2部制といった対策をとっている。試合時間の短縮を狙い導入したタイブレーク制度。このタイブレークでは、送りバントをうまく決められるかが勝敗に左右するといっても過言ではない。
※タイブレーク方式とは?
この送りバント。「Baseball」というより、「野球」ならではの戦術。
では、送りバントを調べてみることにした。
送りバントの歴史
送りバントはいつ、どこで、誰が始めたことなのか?
天理大で調べた方がいる模様である。簡単にまとめると下記のとおりである。
1866年 Brooklynの遊撃手Dickey Pearceが初めてバントをする。
1876年 Bostonの一塁手Tim Murnaneがバントを広める
1880年 シカゴのInter Ocean紙がバントという用語を載せる
1889年 ボックススコア(打席数・安打数などの試合記録)に「犠打」が初めて記録
1890年代 Ned Hanlon監督が戦術としてバントを広める
1894年 「犠打」が打席数から除外される(凡打にカウントされない)
〜1912年 日本でもバントが普及する。
つまり、バントはアメリカ発祥で、その後45年の間に日本に入り普及した戦術であることがわかった。
タイブレークでの送りバント戦術はありか?
プロ野球の場合
結論から言うと、プロ野球の場合あまり効果的な戦術ではないと思われる。
セイバーメトリクスで、2014〜2016年のNPBの得点期待値(得点の生まれやすさを数値化したもの)
バント前(0アウト1、2塁):1.394
バント後(1アウト2、3塁):1.318
つまり、プロ野球においては、バントをすると得点しやすさが下がってしまうということになる。
最近、2番打者や下位打線が容易にバントをしなくなったのはデータをもとにした戦術であることがわかる。
高校野球の場合
これに関しては戦術として一理あると考えている。
理由を打者視点、投手視点から挙げてみた。
まずは、打者視点から
①バントは練習の効果がでやすい。
高校野球はプロ野球と異なり、実力差の大きい相手と対戦することがある。
野球というスポーツの特性上、打撃練習を行っても4割打てればかなり上出来。好投手相手なら3割打てれば御の字だろう。一方、バントは8〜9割の成功率を求められる。スイングは4次元の動き、バントは3次元の動きなのだから、どちらがより単純かは容易に想像がつく。単純なものほど準備がしやすい(予定調和の中に入りやすい)ので、バントという選択には一理ある。
②一芸に秀でた選手の見せ場となる
①にも通じる話だが、バッティングはセンスが問われる。
確かにプロ野球記録をもつ川相さんや、現役最多の今宮選手の域まで到達するにはセンスが必要かもしれないが。
だから、努力をすることで精度を高めることができる。
「一芸に秀でる者は多芸に通ず」という言葉があるように、まずは一つ自分の強みを作ること。そういうスペシャリストが輝くことができる。努力を見てきたチームメイトも同じように喜びを分かち合うことができる。1つのプレーで士気をあげることができる点で有用だと思っている。
③進塁させることで心理的プレッシャーをかける
プロのバッテリーと異なり、高校生は精神的にも未完成であることが多い。
1・2塁だと一打1点のピンチだが、2・3塁だと一打2点。そしてなによりバッテリーエラー(ワイルドピッチやパスボール)で1点を献上してしまうリスクがある。
バッテリーエラーをしたくないので、思い切った配球ができなかったり、落差のあるボールを投げ辛かったりする。投球の幅が小さくなり、バッターが打ちやすい環境を作ることができる。
このプレッシャーをかけるためにもバントは重要だと思われる。
最後に
ここまでバント戦術について書いてきたが、チームのため、仲間のために自分が何をした方がよいのかを考えることは大事だと思う。
これからも熱戦が続くと思うが、球児やその周りの人たちには悔いのないように精一杯戦って欲しい。